日本代表よりも、ドイツ代表が心配になってしまうような試合内容だった。
9月10日の親善試合は日本がドイツに申し込んだのではなく、ドイツからの招待試合。つまり旅費や宿泊費はもちろんのこと、ドイツサッカー連盟から日本サッカー協会に約1億円のギャランティが支払われるという。だから試合開始時間も現地20時45分(日本時間03時45分)になった。ドイツ側からすれば、昨年のカタールW杯で日本に敗れたリベンジマッチ。
ところが試合は意外な展開になった。11分に伊東純也のゴールで日本が先制すると、19分にサネのゴールでドイツが追いつく。その3分後に上田綺世のゴールで日本が再びリードして前半を折り返す。
後半になると日本は4バックから3バックに変更。ドイツに押し込まれたときは5-4-1でしっかりブロックを作って対応。その守備は、押し込まれているというよりも、ボールを持たせている感覚。ドイツは足元ばかりのパスで日本の守備を崩せず、その不甲斐なさにスタンドからブーイングが起こるほどだった。
日本はしっかりした守りからカウンターを仕掛けチャンスを作り、終了間際に3点目、4点目を決め快勝した。
日本が90分間、ゲームをコントロールしていたと言ってもいいほどの完璧な試合だった。今まで日本が強豪と対戦して負けたときの試合展開を、ドイツのホームで日本がやってのけた。それだけ昨年のカタールW杯から成長しているということだ。
森保監督の采配も当たった。途中出場の浅野拓磨、田中碧が得点を決め、久保建英が2アシスト。これ以上ない結果だ。世間はバスケットW杯、ラグビーW杯で一喜一憂している中、サッカーも意地を見せた。
ただ、W杯でベスト8以上を目指すのであれば、全体的な選手層は薄い。中盤には、久保建英、堂安律、田中碧と先発してもおかしくない実力者が揃っているとはいえ、ワントップは上田綺世が結果を出したが、まだまだ手薄。長友佑都、酒井宏樹が抜けた両サイドバックも選手層は薄い。
現状に満足せず、常に上を目指してプレーすること。それが日本代表のレベルアップ、選手層の厚さに繋がるはずだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。