立憲民主党の蓮舫参院議員が東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)に立候補する意向を表明した。蓮舫氏は「反自民党政治、非小池都政の姿勢で臨みたい」と述べ、3選を目指す小池百合子都知事への対抗心をむき出しにした。
小池知事をめぐっては、最近の衆院東京15区(江東区)補欠選挙で、自らが推した候補が敗れるなど「小池神話」に翳りが見えるが、自身の選挙では無類の強さを発揮してきた。
蓮舫氏としてもそのことは百も承知だけに、永田町では、
「蓮舫氏は負けたとしても、次期衆院選に鞍替えを図るのではないか」(自民党東京選出議員)
との観測が出ている。
蓮舫氏は民進党代表だった2016年にも、衆院比例代表単独で東京ブロックの名簿登載順位1位として、立候補する可能性が報じられた。「女性初の首相」への意欲を見せる蓮舫氏は、
「その足掛かりとして、都知事選を利用しようとしているのではないか」(前出・自民党東京選出議員)
というわけだ。というのも、出馬の記者会見で蓮舫氏が強調したのは、
「裏金議員、政治とカネの自民党、絶対に許さない。納税者の気持ち、誰よりも考えなければいけない都民の気持ちに寄り添いたい」
つまりこれは自民党の「政治とカネ」をめぐる問題であり、都政への具体的な公約の説明はないなど、まるで国政選挙のような出馬会見だったからだ。
自民党でも宮沢喜一氏、石原慎太郎氏、そして小池氏らは参院から衆院に鞍替えし、総裁選に立候補している。最近では林芳正官房長官も、衆院へと転出した。
参院議員が首相に指名されることに問題はないものの、これまでに前例はない。首相にとって「切り札」は衆院の解散権を持っていることが、参院議員のまま「信を問う」と言っても、説得力に欠ける面はある。予算委員会の審議は衆院が先であり、閣僚も衆院議員が中心。国会や内閣はあくまで、衆院が中心といえる。
蓮舫氏は参院議員としての悲哀を味わってきたので、仮に都知事選で敗れたとしても、
「次なる選択肢が用意されていれば、思い切って小池氏に挑戦したくなったのではないか」
と前出の自民党東京選出議員は語るのだ。
ただ、自民党内では蓮舫氏が比例単独ではなく小選挙区からも立候補した場合を想定し、どの選挙区を選ぶかの憶測が出ている。話題性大なのが、同じく衆院に鞍替えする丸川珠代参院議員の東京7区(港区、渋谷区)だ。立憲民主党の同僚だったものの、離党して無所属となった松原仁氏の東京26区(目黒区、大田区)の可能性も取り沙汰されている。
いずれにせよ、無風との見方があった都知事選は、にわかに騒がしくなってきた。国政への影響も大いにありそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)