2026年に開催されるサッカーの北中米W杯に向け、日本代表はアジア2次予選(6月6日ミャンマー戦、11日シリア戦)を戦っている。
攻撃陣は久保建英や三笘薫を筆頭に、歴代最強クラスと言えるほどタレントが豊富だが、それでも生き残りをかけたし烈な争いが繰り広げられている。
そんな中、サッカー関係者が「今、一番おもしろい」とひそかに注目しているのが、右サイドバックのポジション争いだ。
「第2次森保ジャパン」ではこれまで、オランダのAZアルクマールに所属する菅原由勢と、セレッソ大阪の毎熊晟矢がファーストチョイスだった。しかし、1月に開かれたAFCアジアカップカタール大会でともに散々な結果だったことは記憶に新しい。サッカー記者が振り返る。
「グループリーグの第1戦と第2戦は菅原を先発に起用しましたが、どこか試合に入りきれておらず、集中力を欠く緩慢なプレーを連発しました。それ以降は、3試合連続で毎熊が先発に起用されています。ところが毎熊は、ダイナミックな攻撃で存在感を発揮する一方で、日本が敗退した準々決勝のイラン戦ではフィジカルの弱さを露呈。特に空中戦で競り負ける場面が目立ち、森保監督を満足させる内容ではなかったと言えます」
一転、レギュラーは白紙状態で混沌とする中、まさにチャンス到来とばかりにJリーグで強烈にアピールするのは、鹿島アントラーズの大卒ルーキー・濃野公人(のうの・きみと)だ。
関西学院大学出身の濃野は、この名門クラブで大卒新人としては31年ぶりとなる開幕スタメンの座を奪うと、右サイドバックながらすでに5ゴールを記録中だ。チーム内では、FWの鈴木優磨とチャヴリッチに続く3位で、すでに重要な得点源として認知されている。スポーツ紙記者が驚きを隠さずに言う。
「高卒と大卒の違いはありますが、鹿島のレジェンドである『内田篤人2世』と呼ばれています。超攻撃的なサイドバックで、ゴール前にボールがこぼれたら、FWを追い越して濃野が顔を出している。本人も『点を取る部分は誰にも負けてはいけない』と、まるでストライカーのような発言をしていて、絶賛売り出し中というわけです。パリ五輪世代でサプライズ選出があるかもしれません」
どうやら、飛び級で日本代表に推す声すら出ているようで、間違いなく目が離せない逸材だ。
もう一人、「隠し玉」として注目なのが、FC東京の白井康介だ。大阪桐蔭高校時代に「浪速のロッベン」の異名で相手チームを震撼させた韋駄天は、JFLやJ2、J1のチームを渡り歩いた苦労人でもある。
今年で三十路を迎えて、ふつうなら体力が落ちてきそうな年齢ではあるが、白井の成長曲線は下降どころか、むしろ覚醒しているという。前出のスポーツ紙記者が話す。
「圧巻のスプリント(全力疾走)が魅力で、試合90分間、誰よりも走り続けています。あまりに止まらないので、チーム内では『超白井』とイジられていますが、相手チームから見たら、手のつけられない厄介な存在でしょう。白井自身が遅咲きでの日本代表入りを目指していて、モチベーションが高い。競馬に例えるなら大穴ですが、選出されてもおかしくない結果を出しています」
5月22日の「ルヴァンカップ」のサガン鳥栖戦で肉離れをしたのは痛かったが、戦線復帰するのは時間の問題だという。
大型ルーキーと遅咲きのスプリント王の参戦で、激化する日本代表の右サイドバック争い。9月に始まるアジア最終予選に向けて、森保監督にとってうれしい悩みの種となってほしいところだ。
(風吹啓太)