もはや逃げている場合ではない。
右肩の張りで60日間の負傷者リスト(IL)入りしているメッツの藤浪晋太郎が現地7月2日に2Aでリハビリ登板。1回2三振、無失点で終えた。投球数はわずか8球で、その全てがストライクという「らしからぬ投球」だったが、なぜか現地での評判はいまひとつだ。メジャーリーグを取材するスポーツライターが、その理由を明かす。
「藤浪が今季投げていた3Aに比べ、2Aは打者のレベルが極端に低い。抑えて当然です。それはいいとしても、藤浪の『もうひとつの欠陥』が明らかになった投球でしたからね」
それは阪神時代から再三にわたり指摘されてきた、ボールに向かう姿勢だという。セカンドゴロで三つ目のアウトを奪ったのだが、この処理が問題だった。
打球はそれほど勢いがなく、マウンド前で大きく跳ねる。ところが藤浪は捕球しようとはせず、頭を抱えてしゃがみ込んでしまったのだ。この映像を目の当たりにしたメジャー関係者からは、
「強烈な打球でなく、普通に捕球できたはず。明らかにボールを怖がっていたようにしか見えない」
と失笑が漏れたという。阪神時代の藤浪を知るスポーツ紙遊軍記者が指摘する。
「打球を怖がることが多く、確かに『闘争心がない』と指摘されてきました。今は少しでもアピールしなくてはいけない立場なのに、マイナスの印象を与えてしまっては…」
本来ならとてもメジャーからお呼びがからないのだが、今のメッツはブルペンが壊滅状態にある。守護神のエドウィン・ディアスが粘着物質使用の規定違反で、10試合の出場停止処分を受けたことに加え、ドリュー・スマイリーが右肘を痛めてIL入り。リード・フォーリーもIL入りしており、今季好調のドリュー・スミスはトミー・ジョン手術を受けることが確定的となっている。それこそブルペンは、猫の手も借りたい状態なのだ。
1年契約の藤浪にとって、今が千載一遇のチャンス。打球から逃げるのは恥で、役には立たない。
(阿部勝彦)