多くの鉄道会社が自社のグッズを販売している…そんな事実をご存知だろうか。知ってはいても、具体的にどんな物を売っているのかはわからない、という人が多いはずだ。最近の鉄道グッズは想像をはるかに越える、斜め上のモノが売られている。
鉄道会社がグッズ展開に熱心になったきっかけは銚子電鉄にあったと、鉄道ライターは言う。
「2006年、経営難に苦しんでいた銚子電鉄は車両の修理費を稼ぐために『ぬれ煎餅』の購入を呼びかけました。これが大きな話題になり、ぬれ煎餅は大売れ。なんとか車両の点検修理費を捻出することができたんです。ぬれ煎餅をはじめとしたグッズの売り上げ額は高く、今では鉄道運賃収入を越える金額になっています」
この成功を受けて、多くの鉄道会社がグッズ販売に力を入れ始めた。クリアファイルや記念きっぷ、駅名のキーホルダーといった定番のものだけでなく、「こんなものが売れるのか」と首を傾げたくなるものも少ないない。
青森の弘南鉄道は「鉄苦路~テツクンズ~」を1100円で販売している。車輪をきれいな円にするため、レールに当たる面を削る作業があるのだが、その時に出た削りカスを売っているのである。つまりは「鉄くず」だ。
群馬の赤城山のふもとを走る上毛電鉄は、つり革やまくら木を販売。といっても、つり革そのものを売るのではなく、実際に運用している車両のつり革にオーナーの名前とメッセージを書き込む。まくら木も同様に、オーナーの名前とメッセージを記したプレートを貼るサービスだ。つり革は1本1万2000円。まくら木は1口1万円。どちらも、いくつも購入できる。
車内にストーブを設置した「ストーブ列車」で知られる、青森の津軽鉄道が売っているのは副駅名だ。駅名の命名権、いわゆるネーミングライツ事業を展開する会社はいすみ鉄道や銚子電鉄などいくつかあるが、販売先は企業や団体のみ。しかし、津軽鉄道は個人でも購入可能だ。
とんでもグッズを販売するトップランナーは、ブームの火付け役となった銚子電鉄である。これまでに多くの予想外な商品を販売してきた。前出の鉄道ライターも、そのラインナップには驚かされたと話す。
「銚子電鉄は『売れるものは何でも売れ』の精神で、線路の石を缶に詰めて販売したことがあります。電車の走行音やドアの開閉音を、着信音として売ったことも。使用済みのレールをカットしたグッズもあります(写真)。線路の石なんて欲しがる人がいるのかと思いましたが、すぐに完売しましたね」
鉄道会社がグッズを販売するのは、経営難を少しでも解消するため。これからも、どんどん変わったグッズが出てきそうである。
(海野久泰)