ポケットモンスターを象徴するキャラクターといえば、それぞれに思い入れはあれど、シリーズごとにユーザーの相棒となる「御三家」とピカチュウだろう。ところが今どきの小学生に聞くと、
「ポケモンアニメにピカチュウは出てこないんだよ」
と言う。
ええっ!? ピカチュウがいないポケモンなんて、ウイスキーが入っていないハイボールみたいなものではないか。
人気絶頂期(今も大人気だけど)の1997年12月に視聴していた子供達が「光過敏性発作」で次々と体調不良を訴えた「ポケモンショック」は、ピカチュウが得意技「10万ボルト」でミサイルを迎撃していた激しい光の点滅があるシーンが引き金となった。その日に登場したポリゴンが原因であるかのように扱われ、ポリゴンが活躍するエピソード回は2024年現在、テレビアニメ版では一度も作られていない。
ピカチュウはそれだけ大事にされてきた看板キャラクターのはずなのに、小学生に促され、夏休み中に放送されているポケモンアニメを確認してみると、現シリーズ序盤に登場していたキャプテンピカチュウ(サトシの相棒、ピカチュウとは別個体)は確かに出てこない。
そういえばピカチュウの中の人、大谷育江さんが演じるアニメ「ONE PIECE」のラブリーなトナカイ、トニートニー・チョッパーも最近見ない。
もしや大谷さんに何かあったのかと心配したが、ピカチュウとチョッパーと並ぶ大谷さんのハマリ役、アニメ「名探偵コナン」に登場する「少年探偵団」の一員で小学1年生の円谷光彦は、今年の夏に大活躍。毎週、怪事件を解決している。
光彦の奮闘を見る限り、大谷さんに何かあったわけではないようだ。ストーリーの進行上、チョッパーが最近の「ONE PIECE」に登場しないのはわかるとして、なぜポケモンアニメにピカチュウが登場しないのか。アニメ誌関係者によれば、
「現在放送中のシリーズは、過去のサトシとピカチュウの友情を描いたシリーズから一新し、リコとロイという少年少女の成長を描いています。同シリーズには飛行船の船長を務めるキャプテンピカチュウが登場しますが、あまりにもバトルに強い『助っ人』設定だったため、主人公よりも悪目立ちしているという指摘が続出しました」
確かに現シリーズに登場する「キャプテンピカチュウ」はマッチョで、茶目っけのあるサトシの相棒ピカチュウとは別モノ。大谷さんが「別個体」を力強くかつ見事に演じ分けている。だがポケモンGOやポケモンSLEEP、東京土産の定番「東京ばな奈」やミスタードーナッツとのコラボドーナツ、ポケモンパンでお馴染みの可愛いピカチュウのイメージからは、かけ離れてしまっているのも確かだ。
だから、というわけでもないだろうが、春から夏にかけて、主人公たちで壁を乗り越えるというストーリーが続いている。リコとロイ、相棒のポケモンが成長しない限り、キャプテンピカチュウの登場はないのかもしれない。
首都圏のJR東日本管内を通勤している人は見かけたことがあるかもしれないが、JR東日本とポケモンのコラボ企画「ポケモンスタンプラリー」に合わせて京浜東北線、山手線、中央線にポケモンを描いたラッピング車両が8月下旬まで運行中だ。アニメでピカチュウは封印されても、せめて黄色い総武線各駅停車で「ポケモンの功労者」ピカチュウラッピング車両を見たかった…。
(那須優子)