世も末だ。フリマアプリでわずか数千円を得るために「子供の安全」「子供の命」を売るバカ親が現れた。
問題になっているのは、全国の新小学1年生に毎年配布される、交通事故傷害保険付きの「黄色いワッペン」。2024年度は同事業60周年を記念して、ポケットモンスターの人気キャラクター「ピカチュウ」が横断歩道を渡る特別デザインのものが配布された。
これを「限定デザイン 傷害保険付き 今しか手に入らない入手困難の品です」などという謳い文句で、小学1年生の保護者と思しき人物が3000円から7000円ほどの値段をつけて、フリマアプリで転売しているのだ。あるフリマアプリではすでに15点以上が出品され、売却済みになっている。
販売履歴を見ると数分で入札が完了している。子供の保険を売る方も売る方だが、買う方も買う方である。出品者は大阪府や兵庫県の関西地方と、茨城県や栃木県の北関東に集中。問題のワッペンのほかに子供服や幼稚園保育園の制服も出品していることから、ガチで小学生の保護者や親族が、小学1年生に配布されたものを売りさばいていると思われる。中には黄色いワッペンが入っていた封筒だけを数百円で売る、商魂たくましい者までいた。
黄色いワッペン配布事業を行っている損保ジャパンの公式サイトによれば、このワッペンは交通戦争と言われた1960年代の悲劇と、子供を失った親の悲嘆をきっかけに始まった。
〈株式会社みずほフィナンシャルグループ、明治安田生命保険相互会社、第一生命保険株式会社とともに行っているこの事業は、子どもを交通事故で失った母親の訴えが紹介された新聞記事がきっかけとなり、1965年にスタートしました。2023年で59回目を迎え、これまでの累計贈呈枚数は約7082万枚になりました〉
今回の60回目の記念ワッペン転売について、共同事業者のみずほフィナンシャルグループは、法的手段も辞さないと表明している。
というのも、このワッペンには登校に不慣れな小学1年生が登下校の途中に事故に遭った場合の傷害保険が付与されており、転売は違法行為にあたる。わが子のワッペンを「傷害保険付き」と謳って出品したバカ親の子供がもし登下校中に交通事故に巻き込まれた場合、保険金請求はできない。
さらに今回の悪質な転売について、金融業界はフリマアプリ運営会社に転売ヤーの身元照会をするとみられるため、転売ヤーやバカ親は金融業界のブラックリスト入りする。つまり、生命保険や損害保険への加入ができなくなることが予想されるのだ。
ワッペン転売が過熱するあまり懸念されるのは、転売目的でいたいけな小学1年生の黄色いワッペンを盗む輩が出てくることと、ワッペンを転売するほど交通安全意識に欠けるバカ親が無保険で車に乗り続ける可能性があることだ。
フリマアプリの運営会社や自動車業界でも、交通安全を軽視する転売ヤーのブラックリストを作ってほしいものである。
(那須優子)