「南場オーナーが本当に羨ましい。それに比べてウチは…」
そんな恨み節が、広島ファンの間で渦巻いている。
リーグ3位からまさかの下剋上で、26年ぶりに日本一に輝いたDeNA。祝勝会ではDeNAの南場智子オーナーが優勝記念の帽子をかぶり、チームカラーのブルーのポンチョを着て参戦。三浦大輔監督が南場オーナーの背後から頭にビールをかける写真がSNSに投稿された。
南場氏は1999年に株式会社ディー・エヌ・エー設立を設立し、代表取締役社長に就任すると、2015年にDeNAベイスターズのオーナーになった。プロ野球初となる女性オーナーの誕生だ。
柔らかな笑顔でDeNAの選手を見守る姿から、ファンの間では「ポジママ」と呼ばれ、絶大なる信頼を得ている。選手の応援歌を全て覚えていたり、沖縄春季キャンプに1週間滞在するなど、親しみ深いエピソードは枚挙にいとまがない。
そんな南場氏に羨望の眼差しを向けているのが広島ファンだ。広島は12球団で唯一「親会社」を持たず、「12球団唯一の市民球団」と呼ばれている。だがその実態は、松田元オーナー家の私有球団といわれる。
今秋のドラフト会議では12球団のオーナーでひとりだけ会場に姿を現すなど、監督や選手の人事に深く関わっているといわれ、「だから40年間も日本一になれない」と、ファンは諦めの境地に陥っているのだとか。
広島が日本一になったのは1984年が最後で、松田氏がオーナー代行となったのは1985年。確かに松田オーナーとともに「負の歴史」を歩んでいることになる。「カープはいつまで市民球団やってるんだよ」との不満が出るのも不思議ではないような…。
広島は今季、9月にセ・リーグ記録となる月間20敗を喫して力尽きた。FA戦線では流出ばかりで、これまで人的補償で獲得したのは赤松真人(阪神)、一岡竜司(巨人)、長野久義(巨人)、日高暖己(オリックス)の4人のみ。いずれの選手も出場機会を増やして活躍したが、ファンとしてはそろそろ秋山翔吾以来のFA選手を獲得してほしいのではないか。
今オフは阪神・大山悠輔やDeNA・佐野恵太らがFA宣言するのではないかとみられている。どちらも広島の補強ポイントにマッチしているだけに、期待が寄せられているが…。
「金と顔は出しても、現場にはいっさい口を出さない」という南場オーナー。ファンが求めているのは、そんな姿なのだろう。
(ケン高田)