B でも、黒田の去就に関しては、スクープは出ません。戦時中か、と言われるほど、松田オーナーの言論統制は徹底されていますから(笑)。
A そうだね。何かあれば取材拒否という、黄門様の印籠を出す。松田オーナーにウラを取りに行ったら最後、全部教えてくれるけれど、「俺がOKを出すまで書くな。書いたら出入り禁止!」だから(笑)。
B 実際、昨年オフにマエケンのメジャー移籍のスクープを飛ばしたスポーツ紙が、キャンプイン直前まで取材拒否にあって困っていた。でも、この松田オーナーの取材拒否の効果は抜群で、現場が困るような記事が一切出ない。メディアの記事に潰される某球団とは違って、優勝を後押しした形かな。
A そのマエケンはドジャースで、メジャー1年目の勝利記録で野茂英雄を抜く14勝をあげて、カープの元エースの面目を保った。肘の不安が原因で出来高重視の契約になっているけど、結局、10億円以上稼ぐことになってウハウハ。でも、自分が抜けて優勝したことに、「なんで?」と複雑な心境らしいよ。
C マエケンが抜けたことで、開幕前はカープOB以外のほとんどの評論家が広島を優勝予想から外していた。補強もできていなかったから当然の予想だけど、心苦しかったというマエケンはシーズン中もずっと広島の勝ち負けを気にしていて、(スマホの)LINEで広島の若手投手を励ましていたからね。優勝にはホッとしているらしい。それでも「マエケンがいなくなっても優勝できた」という結果に、ちょっと複雑な気持ちがあることも事実。
D でも、よく考えてみると、優勝の裏には広島のフロント力もあるね。ルナがケガ、エルドレッドも故障したことで、外国人枠が空いてしかたなしに使ったジャクソン、ヘーゲンズが、抑えの中崎翔太へとつなぐ勝利の方程式を作ったけれど、これもフロントが準備していたからこそ。広島の外国人を選んでくる眼力は定評がある。
A アメリカに駐米スカウトが2人いて、1人は日本ハムと広島で中継ぎとして活躍したエリック・シュールストロムで、もう1人が西武、広島でプレーしたスコット・マクレーン。基本、「安くて可能性がある。日本に対応できそう」がポリシーで、特にシュールストロムが推薦してくる選手が次から次へと活躍している。最多勝候補のジョンソンもそう。90年、ドミニカにアカデミーを作るなど、先見の明があったグローバル戦略が花開いたよね。
C スカウト陣の眼力も広島の特徴。緒方監督や前田智徳に代表されるけれど、三拍子そろった素材を狙う。「神ってる」鈴木は、阪神の北條史也を指名する寸前に担当スカウトの熱意で変わったし、ショートの田中広輔にしても、東海大時代は巨人・菅野智之の球拾いをしていた選手。後半戦に中継ぎ起用され、福井優也の代役で急きょ先発登板もして勝利した薮田和樹も亜大時代は肩を痛めてほとんど投げていない。ところがたまたま練習試合で投げた150キロ級のボールをスカウトが見逃さなかった。
<座談会参加者>
A=スポーツ紙デスク B=テレビ局スポーツ報道担当 C=カープ担当記者 D=球界OB