「誰や、引き留めたんは! ワシャ、もう準備して待っとったのに!」
星野仙一氏が中日の監督に再登板した1995年シーズンオフ、選手を前にして発した第一声がコレだった。いったい何を指してのことか。
この謎を明かしたのは、中日OBの彦野利勝氏。野球解説者・高橋慶彦氏のYouTubeチャンネル〈よしひこチャンネル〉の11月20日の動画で、彦野氏はこう切り出した。
「(星野監督就任は)本当は前の年だったんです。前の年が例の『10.8』っていうのがあって、高木(守道)さんは今年で辞めるって公言してたんですけど…」
「10.8」とは1994年、長嶋茂雄監督率いる巨人と高木守道監督の中日が同率首位に並び、10月8日の直接対決最終戦で勝利したチームがペナントを制することになった、世紀の一戦である。結局、巨人が6-3で中日を下しているのだが、彦野氏の説明によると、
「最終的に巨人に負けて、優勝できませんでした。その時に川又(米利)さんが選手会長で、僕と山本昌が副会長で、監督室に行ったんですよ。『これでいいんですか、監督辞めても』っていうようなことを言ったんですね。結局、辞めないことになったんです。我々が引き留めた、みたいな。星野さん、準備して待ってるんです」
高木監督は翌1995年も続投したが、チームは低迷。6月2日の阪神戦での友寄正人審判への暴行によって退場処分を受け、これが監督として最後の試合となった。その後、徳武定祐氏、島野育夫氏が監督代行を務めたが、中日は5位に終わる。
星野監督体制となった1996年は2位に浮上。1997年は最下位に沈んだが、1998年に再び2位になると、1999年に優勝する。
星野第2次政権は「準備した」甲斐があったようだ。
(所ひで/ユーチューブライター)