あの名作「北の国から」の黒板五郎は、田中邦衛ではなかったかもしれない。そんな衝撃の告白をしたのは、脚本家の倉本聰だった。
1981年から放送された「北の国から」は、五郎とその息子・純(吉岡秀隆)、娘・螢(中嶋朋子)の成長と周囲の人物とのつながりを描いた、不朽の名作だ。
「最初、純の目線で書き始めたんですよ。電気も水道もない廃屋に、都会しか知らない子供たちが放り込まれたらどんな反応をするのか」
12月21日の「人生最高のレストラン」(TBS系)で、倉本はそう話し始めた。自身も北海道に移住して間もなく、見るもの聞くもの全てが珍しかったからこそ、そうした子供目線で物語が始まったというのだ。ところが、自身が年齢と経験値を重ねたことによって、徐々に五郎の目線に変わっていく。そして飛び出したのが、
「(五郎役の)候補は何人かいた」
田中ではなかったとすれば、いったい誰なのか。
「高倉健、西田敏行、藤竜也、緒形拳、中村雅俊、それと田中」
錚々たる主演候補の名前を挙げたのだ。
その中で田中に決定した理由はこうだ。
「誰がいちばん情けないかっていうのを皆に手を挙げさせたところ、文句なく田中邦衛だった」
確かに五郎は一生懸命に生きつつも、ずっと情けない面を見せていた。そのことが理由で純との仲がうまくいかなくなったこともあるが、純もまた情けない男であり続けた。
「そう考えると、当時まだ子供だった吉岡を抜擢した慧眼には驚かされます」(テレビ誌ライター)
倉本には「北の国から」の続編を書きたい気持ちがあったようだが、田中が亡くなったことによって不可能に。なってしまったことを明かした。ただ、「アニメでできるかもしれない」と仰天アイデアが…。
「アニメ版とは斬新ですが、現在の吉岡と中嶋が、その後の純と螢がどうなったのかを演じながら五郎の生き様と死に様を述懐する、実写版の続編も見てみたい」(前出・テレビ誌ライター)
ぜひとも実現させてほしい。
(石見剣)