2年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会という大役を果たした有吉弘行。自慢の毒舌を封じ、愛想笑いを浮かべての人畜無害な進行には2023年の時点で「こんなの有吉じゃない!」と思ったのに、まさか続投するとは…。
昨年、第一子を授かり「人の親」になったとはいえ、「いいひと」イメージを無理に出されると「それはちょっと違うのでは」と感じてしまう。
その点、内村光良は大違いだ。「紅白」では西田敏行の追悼として、盟友の松崎しげる、武田鉄矢、田中健、竹下景子の4人が「もしもピアノが弾けたなら」を歌った後で感想を求められたものの、感極まって泣いてしまい、コメントできなかったウッチャン。その自然な涙に、こちらももらい泣きしてしまったほどで、結局のところは「人柄」ということだろうか。
話を有吉に戻す。そんな「紅白」の有吉は胡散臭くて苦手だが、自然な優しさを見せる有吉は嫌いではない。
それは1月5日放送「有吉クイズ」(テレビ朝日系)でのこと。「有吉とメダルゲーム Wジロウ編」と題する、新春拡大1時間SPだった。「ゲーセンでメダルゲームをしながら、有吉とゲストが会話をする」というただそれだけのものだが、これがなかなかいいのだ。
前回は後藤輝基(フットボールアワー)がゲストだったのだが、無心でゲーム機にメダルを投入しているせいか、変に構えずに会話しているうちに、普段は語らないようなことをふと語ったりするので、見ごたえがある。
今回、シソンヌのじろうが登場し、メダルゲームに夢中になりつつ近況を話すと、途中で退場。続けて現れたのは、ハチミツ二郎(東京ダイナマイト)だった。
久しぶりにテレビ出演のハチミツ二郎は、杖をついて登場。これには理由がある。2018年に急性心不全を患い、2020年にはコロナウイルスに感染して危篤状態に陥り、現在は週3回の人工透析を受け、電動車椅子に乗る生活を送っているという。しかもその間に離婚を経験してシングルファーザーとなり、腎移植手術の失敗もありと、散々な状態なのだ。
そんな自身の壮絶な体験をnoteに投稿していたのだが、これを有吉がラジオ番組で話題にしたことがきっかけとなり、閲覧者が激増。
「退職金くらいの売り上げを(手にしまして)」
と有吉に感謝の意を述べるハチミツ二郎に、有吉は笑って言う。
「あ、そう。よかったな、それは」
そしてハチミツが月・水・金に人工透析を受けていると聞くと、
「別にじゃあ、月・水・金じゃなかったら普通に仕事、オファーも全然いいってこと?」
有吉の提案にハチミツは、頭を下げながら言った。
「今まで、そこに劇場(の出演)やってたんですけど、劇場辞めちゃったんで、テレビ出なきゃいけないんですよ。弘行さんお願いします」
話は即座に進み、
「俺は別にいいけど。月・水・金以外ね」
振り返れば「有吉クイズ」では以前にも、認知症になってからメディアに出なくなっていた蛭子能収に対し、過去に共演経験が多かった有吉が「会いたいな」と出演をオファー。久しぶりに蛭子が元気な姿を見せてくれるきっかけとなった。今回もハチミツ二郎の願いを受けて、なんらかの手助けをしそうな感じが漂っている。
VTRが終わり、スタジオで有吉はこう毒づいた。
「もっと病気の話とかも、大変な話いっぱいあるんだよ。娘さんとの関係とか、親御さんとの関係とか、いっぱい大変なことあるんだけど、辛気臭いじゃん。やっぱりメダルゲームやりたいからさ」
この照れ隠しの毒舌が、いかにも有吉らしい。これが「紅白」でも見せられればよかったのに、と残念でならない。
(堀江南/テレビソムリエ)