バスケットボール大好き芸人でおなじみの麒麟・田村裕はかつて、自身の貧しい青年期を語った著書「ホームレス中学生」を大ヒットさせた。
その印税2億円が入ってきた時の話だ。かつて家族を捨てて行方をくらませ、番組企画で発見された父親が「戸建が欲しい」と言い始めた。田村が親へ仕送りした上での甘えだ。それでも税理士に「(印税に)府民税がかなりかかりそうなので、マンションを買えるほど残らない」と言われたことを伝えると、まるで別れた恋人のように、グチグチと皮肉メールが送られてきたという。
ナインティナイン・矢部浩之の父親も、息子におねだり三昧だった。仕送りのおかげで痛風になるほど贅沢な暮しをしていたり、矢部が家に送金しないと、激痛のはずの脚を助手席に放り出して車を運転、夫婦で大阪から東京までお金を無心しに来たことがある。さらに矢部の口座から勝手に現金を引き出して愛人に貢いだり、借金の尻拭いを頼んでは、断られると「お前なんか勘当じゃ!」と逆ギレしていたというのだ。
そんな父親も旅立った。矢部が言う。
「最後は声を出す力もなくなって、老衰ですよね。しゃべられなくなったので、あいうえおの五十音のひらがなボードを作ったんです。『天気いいな、お父ちゃん』って言ったら『そ・う・や・な』って(指さしで)会話してたんですけど」
亡くなる直前、父親はボードで「す・ま」と指さし始めた。矢部は「うわ、最後に謝るんや」と泣きそうになったが、実は「スマホが欲しい」とまさかの展開に。
「そんなことある!? 今、欲しがる!? 今から買ってもねぇ」
父親のその思いは拒否されたのだった。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。