東京女子医大(東京都新宿区)の新校舎建設工事をめぐり、アドバイザー報酬名目で約1億7000万円を不正に支出したとして、警視庁捜査2課に背任容疑で電撃逮捕された元理事長の岩本絹子容疑者。名門女子医大の「女帝」「プーチン」「カルロス・ゴーン」の異名を取り、一強独裁による専横の限りを尽くしてきた岩本容疑者は今、江東区にある東京湾岸警察署(江東区)の「女性専用留置場」に収容されている。
あまり知られていないことだが、警視庁が管轄する留置場のうち、女性専用の留置場は以下の5施設しか存在しない。すなわち23区内では東京湾岸警察署、原宿警察署(渋谷区)、警視庁本部西が丘分室(北区)の3施設、多摩地区では武蔵野警察署(武蔵野市)、警視庁本部多摩分室(立川市)の2施設である。
このうち東京湾岸署内にある留置場は192人を収容できる最大、最新の施設だが、女性専用留置場に収容されている岩本容疑者の日常は、過酷極まるものだ。
留置場によって多少の違いはあるが、収容者は「7時に起床、洗面、点呼」⇒「8時に朝食」⇒「12時に昼食」⇒「13時に運動」⇒「18時に夕食」⇒「21時に就寝」という、息の詰まるような生活を強いられることになる。言うまでもなく、それ以外の時間には朝から夜まで連日、逮捕容疑に関する厳しい取り調べが行われる。
それだけではない。自由を完全に奪われた岩本容疑者の留置場での日々について、警視庁管内の元留置担当官は、次のように指摘するのだ。
「留置後、収容者は番号で呼ばれることになる。名字や名前で呼ばれなくなることへのショックは、高い地位にあった自尊心の強い収容者ほど大きいようです。食事は無料で提供されますが、1食300円程度の粗末なもの。収容房にテーブルは備えられておらず、地べたに置かれたままのものを、前屈みになって食べることになります」
留置場には収容者が自分でカネを支払って購入する「自弁」という制度もあるが、粗末さという点では留置場の食事と五十歩百歩であるほか、多くの場合、注文できるのは平日の昼食に限られているという。元留置担当官が続ける。
「入浴は夏場の週2回に対して、冬場は週1回と定められている。女性専用留置場の場合、収容房内にあるトイレは背の低い衝立で仕切られてはいますが、留置担当官の監視下で余儀なくされる毎回の排泄行為は、岩本容疑者にとって屈辱的でしょう。当然、排泄に伴う悪臭はしばらくの間、収容房内に漂うことになります」
まさに「堕ちた女帝」の悲惨な末路と言うほかはない。
(石森巌)