この喜連川刑務所は、炊事や洗濯など施設の運営に関わる作業とは別に、多くの民間企業から仕事を受注、受刑者に仕事を振り分けている。受刑者A氏が解説を加える。
「受刑者には平等に刑務作業が割り当てられます。土日は休みですが、平日は1日約7時間は労働をしなければいけません。喜連川には33の工場があって、仕事内容もバラバラ。資格が取れそうなやりがいのある仕事もあれば、退屈極まりない単純作業もあります」
一方、元受刑者のB氏が作っていたのは、トイレなどに置く消臭剤だった。その作業内容を聞くと、
「『消臭元』は、ろ紙が容器の中の液体を吸い上げる仕組みになっていて、自分はこのパーツにろ紙を巻く作業をしていました。初心者は1日頑張ってせいぜい300個がやっと。熟練者になると1400個くらい作れるようになるんです」
この工場は空調が効いていたので過ごしやすかったそうだが、厳しい監視の前では、一瞬たりともサボることは許されなかった。
「作業中は顔を上に向ける、横を見る、しゃべる、人を目で追うなど全てNG。担当官に見つかったら、懲罰の対象となります。ひたすら下を向いて作業するので首がメチャクチャ痛くなります。ゴーンにだって容赦ないはずですよ。作業工場の中では担当者が王様だから、従うしかないんです」(B氏)
一方、井川氏が配属されたのは図書工場だった。受刑者に差し入れされた書籍の中身をめくって、手紙や金属類が入っていないか、検閲や管理を行うのが主な作業である。
「図書係は刑務所の中ではホワイトカラー。肉体労働もないのですが、食事の量もちょっと多いんです。行きたくなかった配属先は、お年寄りを相手にしたりする衛生係ですね。でもちなみに、衛生係はみんなやりたがるんです。おむつを替えたり下の世話をするなど、仕事がきつい分、仮釈放が早いっていう噂があった。慣れたらクソもつかめるっていうけど、潔癖性の私には無理。便器の上に裸で仁王立ちになって飯を食っている受刑者もいて、とても相手にできない(笑)」
少なくとも日本語がたどたどしいゴーン容疑者が、図書係に配属されることはなさそうだ。元受刑者のC氏が有力な配属先として挙げるのが、「カットわかめ」と「イカソーメン」の製造工場だ。
「長さ1メートルくらいの乾燥ワカメを手で細かくちぎって、誰もが知るアノ製品の状態にするのですが、コレがめちゃくちゃ寒い。真冬でも暖房なしで、震えながらワカメを粉々にカットしていました。イカソーメンのカットをする仕事は、切る幅は何ミリと細かく決められ、かなりのスキルが求められます。長時間、立った状態で全神経を手元に集中しなければならず、腰を痛める受刑者が続出。冬でも冷房をガンガンにかけているので、もう少しで凍傷になるところでした。ゴーンは日産で『コストカッター』と恐れられていたので、カット作業は得意だと思うんですよね」
15年にはスローガンに「技術の日産」を打ち出しただけに、お手並み拝見だ。