公明党の斉藤鉄夫代表が連立離脱の可能性をチラつかせながら、選択的夫婦別姓の導入を自民党に迫っている。さらには次期衆院選で、東京の小選挙区をひとつ譲るよう求めた。かつて公明党は自民党に「どこまでもついていきます下駄の雪」と揶揄されたが、今や立場が逆転したかのようだ。
斉藤氏は1月28日の代表質問で、こう主張した。
「結婚して姓を変えることで、多くの方がなんらかの不便や不利益を感じている。国際的にも夫婦同姓を義務化しているのは日本だけだ。国の根幹に関わることは、まず与党が案を決め、野党に相談するのが筋だ」
そして議員立法ではなく、与党案としてまとめて国会に提出すべきとの考えを示した。これに石破茂首相は、
「御党とも十分に意見交換をしたい」
公明党が2013年にまとめた民法改正案では、子供の出生時に夫婦で協議して決めるとしている。これについては自民党内で反対論が強い。
公明党は現在、衆議院で24議席しかない。閣僚や副大臣などを政府に送り込んでおり、それらの議員を除くと、法案提出に必要な21人を確保できない。にもかかわらず強気なのは、夏の参院選で自民党が公明党の支持母体である創価学会の協力を必要としているからだ。選挙区のうち、32ある1人区での勝敗の行方が、選挙結果を左右するとされる。公明党はここに候補者を出していないため、自民党は公明党の機嫌を損ねることをしたくない。そこで石破首相のごとく、ご丁寧な対応となるのだ。
読売新聞によると、自民党の森山裕幹事長らは1月29日、都連幹部と次期衆院選について協議し、公明党が候補者を出して自民党が推薦に回る小選挙区について、公明党が議席を持つ東京29区(荒川区、足立区の一部)に加えて、東京21区(八王子市の一部など)を軸に検討しているという。
連立発足後、25年以上となる自公関係だが、小泉純一郎政権や安倍晋三政権など自民党が強いと、公明党は「下駄の雪」と揶揄されることが多かった。逆に森喜朗政権のような弱い政権では、時に首相の退陣を迫るなど、強く出る傾向にある。
ましてや石破政権は少数与党であり、弱い立場にある。問題なのは、言われっぱなしの自民党内に、斉藤発言に反発する声が表立って出ないことである。このままでは自民党の支持層である保守層からの不満が高まり、自民党は参院選で痛い目にあうことになるだろう。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)