中日がフィリーズなどでプレーしていたリリーバー、ユニオル・マルテとの契約に基本合意した。メジャー通算102試合に登板した実績からして、松山晋也、清水達也らとの新クローザーの座を争っていくようだが、さっそく第一報を「訂正」しなければならない。一部メディアでは「2023年に最速158キロを計測」とあったが、
「直球の平均球速が98マイル超え(158キロ)の間違いではないか」
と、複数の現地取材者が指摘しているからだ。
「球速だけなら、メジャーリーグのランキング上位に入っているはず。若手時代のマルテはその球速で期待され、リリーフで使われてきました」(メジャー関係者)
しかし「球速だけなら」の言葉も気になる。マルテのキャリアハイは2023年の40試合登板だが、防御率は5.64。マイナーでの防御率も5点台であり、奪三振率は高いが、与四球率、被打率も高いという投手なのだ。
「昨年オフ、フィリーズからFAになった後、マリナーズとマイナー契約を結んでいました。2月11日からのスプリングトレーニングでは招待選手としてメジャー契約を目指すことになっていましたが、2月4日に突然、リリースされたんです。おそらく中日が好条件を出して、日本行きを決めたのだと思われます」(現地記者)
マルテは2月2日に30歳を迎えた。マリナーズのキャンプメンバーを見る限り、メジャー昇格は厳しかったと言わざるをえない。やはり新守護神候補のチャンスを与えてくれた中日に行ったほうがいい、と判断したのではないだろうか。
「2023年オフ、巨人が獲得を狙っていた、との情報もありますね」(前出・現地記者)
12球団監督会議が行われた1月20日、井上一樹監督は自ら巨人・阿部慎之助監督に歩み寄り、
「ライデル君をよろしくね」
と話し掛けている。絶対的守護神だったライデル・マルティネスを引き抜かれたことを指したものだが、マルテとの交渉に好感触があったから言えたジョークだったのかもしれない。
気になるのは、コントロールが大雑把なこと。投球の割合は直球よりもスライダー、シンカーが多い。「10球投げたら6割が変化球」で、曲がり幅ではなく、曲がる角度の鋭さで勝負してくるという。
大谷翔平と対戦して抑えたことも紹介されているが、中日首脳陣はまず、マルテの制球難を改善させなければならない。監督会議で出た「よろしく」の言葉が、なんとも意味深なものに変わってきた。
(飯山満/スポーツライター)