「小出さんは褒めて伸ばすタイプってイメージあったんですけど、そのへんはそうだったんですか」
「反論~! 褒めて育てたのは高橋尚子だけ」
これは野口みずきと有森裕子という、2人のマラソン五輪メダリストによるやりとりである。野口が言う「小出さん」はもちろん、有森も指導を受けた小出義雄監督のことだ。
野口はアテネ五輪で金メダル、有森はバルセロナ五輪とアトランタ五輪でそれぞれ銀メダル、銅メダルを獲得している。そして高橋はシドニー五輪で金メダルに輝いた。
野口と有森は、YouTubeチャンネル〈東海テレビ陸上部〉で冒頭のように話すのだが、
「3段階あるんだよ」
と有森は小出監督の指導を評した。
小出監督は千葉県立長生高校、同県立佐倉高校、船橋市立船橋高校で教鞭を執り、アテネ世界陸上で女子マラン金メダルの鈴木博美らを育成。1988年、リクルート・ランニングクラブ監督に就任した。頭でっかちで生意気になりがちな大卒を取らない方針の小出監督が大卒の有森を入部させたのは、
「大した選手じゃないから、あんまり言わないと思ったらしく。(ところが)私は結構やんやん言いながら…だからすごく難しかったと思うんだよね」(有森)
鈴木、有森といった選手を育てた経緯から、高橋尚子を褒めて伸ばすという、
「あの方法が出ただけなんだよ」(有森)
高橋に「Qちゃん」の愛称を授け、好々爺然とした小出監督の姿は、苦労の末に培われたものだったようだ。
(所ひで/ユーチューブライター)