世界が大洪水に包まれ、街が消えゆく中、1匹の猫が流れて来たボートに乗り合わせた動物たちと壮大な冒険の旅に出る。そんなストーリーで今年2月のアニー賞では長編インディペンデント作品賞・脚本賞を受賞。さらにゴールデングローブ賞でもアニメ映画賞を受賞し、現在はアカデミー賞の長編アニメーション賞と国際長編映画賞2部門にノミネートされている映画「Flow」が、3月からいよいよ日本でも公開される。
同作は前作「Away」で鮮烈な長編デビューを飾ったラトビアのクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督による2作目だが、実は今、イギリスで「冒険猫」が連日、BBCなどのメディアで取り上げられ、注目の的となっている。
この冒険猫の名はティリー。2歳のメスで、飼い主はサリー州ウェイブリッジ在住のマイケル・ハーディさんだ。報道によれば、このティリー、とにかく冒険が大好きで、これまで行方不明になること数知れず。その都度、電車やバス、地元の学校、はたまた飲食店の調理場等で捕獲され、ハーディーさんが迎えに行くハメに。そのため行方不明になっても居場所がわかるよう、ティリーに発信器をつけ、常に追跡できるようにした。
そんなある日のこと。ハーディーさんがいつものように、行方不明になったティリーのGPSをチェックすると、示す場所はなんと、自宅があるウェイブリッジから27キロも離れたロンドンのウォータールー駅だった。驚いたハーディさんが駅へ引き取りに行くと、電車に乗って来たと思われるティリーは、駅で確保されていた。
普通ならば鉄道会社から厳重注意を受けてもおかしくないのだが、そこはさすがにウィットに富んだイギリス。なんと、ティリーが利用した路線を運営するサウス・ウエスタン鉄道が、生涯無制限に無料で乗車できる「キャット2ゴー」なる専用乗車パスを発行してくれることになり、このニュースがメディアで報じられることに。サウス・ウエスタン鉄道の広報担当者が言うには、
「このパスさえ持っていれば、ティリーは一生、当社の鉄道を無料で利用できます。ヒゲの生えた放浪猫はいつでも好きな時に、猫らしい冒険を楽しんでほしい」
この粋な計らいにハーディさんは大感激だが、味を占めたティリーの壮大な冒険は、さらにエスカレートしていくかもしれない。
(灯倫太郎)