コロナ禍が明けてインバウンド需要が復活し、日本各地に多くの外国人観光客が訪れている。最近ではオーバーツーリズムが問題になることが増えた。しかし、赤字にあえぐ地方ローカル線にとっては、オーバーツーリズムであっても、観光客が来てくれれば、それだけで大歓迎なのかもしれない。地方のローカル線の苦境を、鉄道ライターはこう解説する。
「地方で鉄道を利用するのは車を運転できない学生らですが、子供の数が減っているため、利用者は右肩下がりです。利用者を増やすには、観光客に来てもらうのが一番なんですが、観光列車を売りにする鉄道会社が増えた今、日本の鉄道好きは少し飽きているため、なかなか集客につながらない。そこで期待されているのが、海外からの観光客です」
千葉県の銚子電鉄ではインバウンド戦略担当を置き、台湾からの観光客を積極的に招いている。
JR東日本とJR北海道、青森鉄道、IGRいわて銀河鉄道は共同で、函館と東北エリアの路線に乗車できる「JR Tohoku-South Hokkaido Rail Pass」を販売。これは連続する6日間、3万円で乗り放題になるパスで、購入できるのは外国人観光客だけ。少しでも多くのインバウンド客を集めようとしているのだ。
先の鉄道ライターは、山形県の山形鉄道フラワー長井線でこんな体験をしたと証言する。
「鉄道利用者が減る3月の平日に普通電車に乗ったのですが、多くの外国人観光客がいて驚きました。話を聞いたところ、台湾からやってきたグループで、地方ローカル線が目当てで日本を旅しているのだと。日本人にすれば、どこにでもある田園風景ですが、外国人観光客には目新しいようで、大喜びしていましたよ。山形鉄道は2人もアテンドをつけていましたが、車内で山形鉄道のグッズを販売し、飛ぶように売れているのを見て、2人もつけていることに納得しました。あのようなグループ客が頻繁に来てくれれば、経営はかなり楽になるはずです」
日本の地方ローカル線のために、1人でも多くの外国人観光客に来てほしい。
(海野久泰)