猫のルーツは、4800万年から4000万年ほど前に北米やヨーロッパに現れた、イタチのような姿をした「ミアキス」という肉食動物。このミアキスには犬と猫の祖先など様々な種類があり、その祖先が猫の系統(ネコ亜目)と、犬の系統(イヌ亜目)の2大グループに分かれ、世界中に広がったとされている。
そんな猫系統の中で、砂漠で暮らすようになったのが、いわゆるイエネコと呼ばれるもの。野生化した猫の原種とされる、リビアヤマネコ(ヨーロッパヤマネコ)だ。リビアヤマネコがイエネコに進化していく過程については諸説あるものの、一般的には紀元前4400年頃に西南アジアかヨーロッパへ拡散した系統と、紀元前1500年頃にアフリカ(古代エジプト)から世界に広がった系統の2つがあると指摘されている。
さて、猫の好物と言えば魚。特にマグロを使ったキャットフードや猫用おやつには目がないことは周知の通りだが、なんと紀元前1500年頃の古代エジプトの壁画には、すでに猫が魚を食べる様子が描かれているというから驚く。
森林や砂漠で育った猫は、なぜマグロ好きなのか。そんな謎に迫った論文が昨年5月、学術誌「Chemical Senses」に掲載され、大きな話題になった。
通常、我々人間が甘味や塩味、酸味、苦味、うま味を感じるのは、舌の味蕾という場所だが、研究チームによれば、猫は人間よりも味蕾の苦味受容体の数が少ないため、砂糖の味を感じることができない(砂糖の味は味蕾の苦味受容体が感知するらしい)。しかし一方、独自の受容体による「うまみ感知センサー」を持っているという。そのため、リンやヨウ素、マグネシウム、オメガ3、オメガ6など、必須ビタミンやミネラルも多く含む、うまみ成分の宝庫であるマグロを本能的に好むようになったのではないかと推察している。
なお、研究による味覚テストでは大半の猫が、マグロに高濃度で含まれるヒスチジンと、イノシン-リン酸を含むものを好んで食べていたとのことだ。
「中世の時代にはすでに中東にある一部の港で、マグロをはじめとする様々な種類の魚を食べるようになっていたことが判明しています。そのため彼らは、マグロが栄養素が高くうま味を備えた最適な組み合わせ食材だということを、本能的に感じ取っていた可能性が高いと推測されています」(サイエンスジャーナリスト)
猫にとってマグロは、至高の食べ物なのだ。
(灯倫太郎)