「14戦負けなし」のクラブ記録を樹立しながら、J1昇格を逃したクラブといえば、2023年の清水エスパルスである。この年のチームを指揮し、今もその任にある秋葉忠宏監督が、昇格失敗の理由を自ら激白した。
J2に降格したこの年、前年に引き続きゼ・リカルド監督がチームを率いたが、開幕から7試合も勝利を掴めず、解任。秋葉コーチが内部昇格で監督に就任した。
「最初からコーチとして入れていたので、こうしたらいいのにとか、もうちょっとこれが足りない、というのが見える。俺もいくつかあった。思っていた所を2つ3つやっただけでよくなった」
前園真聖氏のYouTubeチャンネルでそう語り始めた秋葉監督は、就任後の14試合で負けなし。開幕直後のもたつきがありながら、リーグ4位に食い込んだ。
昇格プレーオフでは準決勝でモンテディオ山形を破り、決勝で東京ヴェルディと対戦。後半アディショナルタイムにPKを与えると、これを決められて1-1の引き分けとなる。規定により、リーグ戦上位の東京VがJ1昇格を決めた。あと数十秒、もちこたえることができれば、清水はJ1昇格だったのだが…。
「はたから見ていたら、上がれるんじゃないのと思っていたよ。みんな思っていたはずだよ。いけるかなと思っていたら、本当にサッカーは何が起こるがわからない」(前園氏)
その気持ちは秋葉監督も同じだったようで、
「俺だって思ってましたよ。ショックすぎて、あのオフ期間をあまり覚えていない」
誰もが昇格を信じていた中で、悪夢の引き分けが明暗を分けることとなった。
だがJ1昇格失敗の原因は別にあると、秋葉監督は分析している。
「あのプレーオフというよりは、リーグ戦で勝ち点1、1ゴール届かなかったことの方が大きい。町田戦(第17節)が、いちばん悔いが残っている。欲を出して勝ち点3を取りにいって(ゴールを奪われ)勝ち点0。俺が欲張らずに引き分けにしておけば(リーグ戦でJ1自動昇格圏の2位に入り)上がっていた」
こうして昇格を逃した清水だが、その後にJ1復帰を果たす。そして今年、秋葉監督は決意を新たにする。
「足元を見て、絶対にJ2に落ちない安定したチームを作る」
清水は第7節を終えて10位。今のところ、安定した戦いを見せている。
(鈴木誠)