高齢化が進む東京都内の下町エリアで「ブラック町内会」「老害自治会」の暴走が始まった。原因は町内会費の強制徴収だ。
トラブルが起きているのは、芸能人の散策ロケ番組でもおなじみの赤羽や十条を擁する東京都北区(山田加奈子区長)。区内の一部町内会が今年から、加入を希望しない若い単身者、若いカップル、シングル親世帯、学生からも強制的に「町内会費 月額100円」を徴収しようとしているのだ。町内会費を払わない場合は、報復として町内会幹部がボランティアで行っている北区からの広報物をポスティングしない「実力行使」に出た。
北区はJR在来線で東京駅へ20分、新宿駅までは12分、池袋駅に5分と交通の便がいい割に、家賃は割安感があるため、若い単身者や学生が多く住んでいる。だが、地方出身者の若者が「町内会に入るメリット」は何もない。
ゴミは戸別回収だし、区の広報物が配られなくても、インターネットで区のサイトを見ればこと足りる。区の広報物は社会人や学生が昼間、仕事や授業に出ている時間帯の高齢者向け娯楽サービス、福祉サービスといった「高齢者向けの読み物」ばかりで、大した内容ではない。
ただし、シングル育児世帯はそうもいかない。児童福祉や検診、ワクチン接種などの地域保健、保育園入園や小学校入学など、育児に必須の情報が掲載されているからだ。広報物は区民が享受するべき権利のひとつである。
全国で悪者扱いされているPTAと同じく、「町内会」は任意加入のはず。それを集合住宅の管理人やオーナー経由で町内会費を強制徴収し、区の広報紙を配布しない「特権」が、民間人の集まりである町内会にあるのだろうか。
強制加入を決めた町内会幹部に聞いたところ、
「たった月100円くらいのことで騒ぐ方が、どうかしている。文句があるなら昼間、町内会の寄り合いに出て反論すればいい。町内会の集まりに参加しない以上、賛成したものとみなす」
とのことで、理性的な話し合いは難しそうである。別の町内会幹部は困惑ぎみにこう話すのだ。
「北区には特殊な事情があって、あたり一帯の地主と公明党、共産党の発言力が強い。北区の自民党総支部トップは、大地主の旧安倍派。隣の板橋区には下村博文元文科大臣がいたり、生前の安倍さんが視察に来たりね。大地主の議員が安倍昭恵さんみたいに政治資金規正法の枠組みをすり抜けて相続税を免除されているとかは、さすがにないと信じたいけど。70代になっても働いている老人と、そうでない老人では価値観が全然違う。ここに先に住んでいるんだから後から来た若者はカネを払え、なんて今時の反社会勢力でも言わないよ」
町内会費強制徴収と、区の広報物が配られていない問題について、北区に見解を求めたが、
「期日までに回答できない」
と答えるのみだった。
地方の若者の未来を憂う石破自民党が、地方から上京してきた若者から金を取ることしか考えていないマッチポンプ。老害有権者と政治家の「増税に従え」「たった100円くらい黙って払え」の同調圧力がエスカレートし、ロシアのプーチン政権の「14歳からウクライナに行け」のごとく、100円玉から命を奪われることになっても、それは投票に行かない若い有権者の自業自得なのだ。
※写真は町内会費を払っている世帯のみ北区ニュースの該当部数を抜き取るようにと説明された「町内会回覧板のメモ」。町内会費を払っていない賃貸住まいの単身者、若夫婦、学生に、区広報は今も届いていない。
(那須優子)