1985年にユネスコの世界遺産に登録。2007年には中国の「万里の長城」やイタリアの「コロッセオ」、ペルーの「マチュ・ピチュ」、インドの「タージマハル」と並んで「新・世界七不思議」に選出されたのが、中東ヨルダンの死海とアカバ湾の間に位置する「ペトラ遺跡」だ。
世界七不思議は、古代人の驚異的技術力により作られたとされる不思議な建造物を指すものだが、そんな謎を秘めたペトラ遺跡には毎年、数十万人の観光客が来訪し、数々の映画の舞台になってきた。中でもこの遺跡を一躍有名にしたのが、1989年に公開され、大ヒットを記録した冒険映画の金字塔「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」だった。この作品ではキリストの血を受けた「聖杯」が残されている場所として、ペトラ遺跡が登場している。
そのペトラ遺跡の中心部に位置する壮大な建造物「エル・ハズネ」の地下で、アメリカ研究センターの調査団が12体の人骨を発見したと発表したのは、今年8月である。エル・ハズネの地下からは2003年、すでに2つの墓が見つかっており、ヨルダン政府許可のもと、調査チームが地中レーダーなどを用いてさらに調査を進めた。すると、墓の下に隠されていた地下室を発見したというのである。
探検チームをことさら驚かせたのは、地下室の様子だった。というのも、それまでにペトラ遺跡で発見された墓は大半が荒らされており、中はもぬけの殻というのがお決まりのパターン。ところが今回見つかった地下室には、人骨が完全な形で残っていたばかりか、青銅や鉄、陶器の副葬品などが、手つかずの状態で置かれていたというのである。しかも、
「映画『最後の聖戦』では劇中、ペトラの神殿内に入ったインディ一行がキリストの血を受けた『聖杯』を見つけ、その聖なる力で数百年間も生き続ける老騎士と遭遇する、という展開になります。それがなんと、映画の聖杯そっくりの遺物が見つかったというんですからね。調査チームの誰もが言葉を失うほど驚いたことは言うまでないでしょう」(外報部記者)
しかし、残念ながらこれは聖杯ではなく、割れた水差しだったことが判明。とはいえ、紀元前4世紀から紀元106年までこの地で暮らしていたとされる、古代アラビアの遊牧民ナバテア人の暮らしの一端が垣間見える貴重な遺物であることは事実。
この発見の模様はディスカバリーチャンネル「Expedition UnKnown」で特集されているので、興味のある方はチェックしてみるといいだろう。
(ジョン・ドゥ)