ではここで、チェック項目(ページ下部)を見てみましょう。
特に【1】~【5】のうち3つ以上当てはまる人は、骨量低下に警戒が必要です。骨量低下は、医療機関で骨密度を測定したり、尿検査や血液検査をしなければわかりませんから、早めに骨密度検査を受けてください。健康診断や人間ドックで実施しています。
【7】については、骨粗しょう症の発症に遺伝的要素が認められているのに加え、家族の間では食事の傾向や生活習慣が似ていることも関わっているようです。
【8】は言わずもがなですね。
【9】は、骨の健康に欠かせない栄養素であり、骨粗しょう症の治療薬としても用いられるビタミンDが、日光に当たることによって体内で生成されるからです。ですから日光を適度に浴びることも心がけましょう。
いったん減ってしまった骨量は、なかなか元に戻すことができません。でも、骨量の減少を食い止めることは可能です。中でも大切なのが食事です。骨量の維持にはカルシウムが欠かせない栄養素なのですが、日本人は慢性的にカルシウム不足です。厚生労働省が示す1日に最低摂取すべきカルシウム量(所要量)は、600mg。この基準値は、諸外国と比べてかなり低いのですが、それすら達成できていないのが現状です。
骨粗しょう症のガイドラインでは、さらに1日800mgのカルシウム摂取を勧めています。ただし、摂取したカルシウムの全てが吸収されるわけではなく、一部は尿として排泄されてしまいます。個人差はありますが、およそ1日560mgのカルシウムを食物からとると、吸収と排泄が同じ量になると言われています。つまり、日本人の所要量600mgをとっただけでは体内に残るカルシウムはわずかであることになります。
骨粗しょう症ガイドラインのように、1日800mg程度を摂取して初めて、毎日十分なカルシウムが取り入れられるとも言えます。ちなみにカルシウムを多く含む食品は、チーズや牛乳などの乳製品、干しエビ、ドジョウ、ワカサギといった魚介類、凍り豆腐やがんもどきなどの大豆製品、そして乾燥ひじき、小松菜、カブの葉などの野菜類や海藻類です。これらの食品を積極的にとって、骨粗しょう症を予防しましょう。
一方、骨のためにはカルシウムだけでなく、前述のビタミンDやマグネシウムなどの栄養素も必要です。ビタミンDの1日の所要量は成人で100IU(2.5μg)とされ、特にウナギのかば焼き、そしてサケ、サンマ、イサキ、カレイなどの生魚に多く含まれます。ビタミンDは肝臓や腎臓で「活性型ビタミンD」に変化し、腸でのカルシウム吸収を手助けします。肝臓や腎臓に障害があると(【10】の人ですね)、カルシウム吸収率が低下する原因となるので、当てはまる人は気をつけましょう。
さらに、マグネシウムも骨の健康に関係します。マグネシウムの1日の所要量は約300mg。カルシウムとの摂取バランスが重要で、カルシウム2に対し、マグネシウム1が理想です。マグネシウムは玄米や豆類、種実類に多く含まれています。
逆に、リンを含むスナック菓子やインスタント食品、炭酸飲料のとりすぎに注意してください。リンは体に必要な栄養素ですが、とりすぎるとカルシウムの尿からの排泄を促進し、腸での吸収も妨げます。
骨粗しょう症の予防は、毎日の食事から、ですよ。
──骨粗しょう症チェック項目──
【1】55歳以上である
【2】体形がどちらかというと、細身である
【3】ちょっとしたことで骨折したことがある
【4】最近、背が縮んだような気がする。あるいは、背中や腰が曲がってきた
【5】乳製品や大豆製品をあまり食べない
【6】運動不足である
【7】家族に骨粗しょう症の人がいる
【8】腰痛持ちである
【9】夜活動することが多く、日光をあまり浴びていない
【10】肝臓もしくは腎臓が悪くなったことがある
※0~3個は経過観察、4~6個は医師に相談を。7個以上は医師の診察を受けてください
◆監修 森田豊(もりた・ゆたか) 医師・医療ジャーナリスト・医学博士。レギュラー番組「バイキング」(フジテレビ系)など多数。ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修も務めた。