社会

重大病が見つかるチェックリスト「夏型過敏性肺炎」

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 真夏を目前に控えた時期ですが、「夏になると咳が出て、家に帰ると体調が悪くなる」なんて人はいませんか?

 そういう人は、「夏型過敏性肺炎」の疑いありですよ!

「夏型過敏性肺炎」という言葉を初めて聞いた方も多いと思います。これは、カビなどを反復して吸い込むうちに、肺の奥にある小さな袋状の肺胞にアレルギー反応が生じ、肺炎となるもの。高温多湿という日本の気候には付き物のカビが「夏型過敏性肺炎」の原因なのです。

 じめじめと暑い季節になると、私たちの家庭の中でも多くのカビが発生します。その種類は数百もあると言われており、食品につくものだけでなく、風呂場や畳の下、洗濯槽、エアコンの中など、隠れたところにもたくさんいるのです。その中でも夏型過敏性肺炎は、「トリコスポロン」というカビが原因となります。発症すると、このカビの胞子を吸い込むたびに、咳などの症状が繰り返し起こるようになるのです。

「トリコスポロン」は、エアコンなどに潜んでいることが多いため、6月から9月の使用期間だけ症状が現れることが多いのが特徴です。チェック項目(ページ下部)の【1】~【5】のように、「夏の間だけ咳が出る」「旅行などで自宅を離れると体調がよくなる」「夏になって、カビが多くなると、同じ症状を繰り返す」「夏場に長時間、家にいると咳がひどくなる」といった症状があれば、夏型過敏性肺炎の可能性があります。

 また、夏に発症して秋には症状が治まり、同じ季節になると数年間繰り返す傾向があります。思い当たる人はいませんか?

 夏型過敏性肺炎は、30~50歳代の女性に多いとされていました。その理由は、家庭内の滞在時間が長く、カビとの接触時間が他の家族よりも長いため、と言われていますから、男性でも家にいる時間が長い人はご用心。特に独身や単身赴任などで1人暮らしをされている男性が危険です。

 チェックシートの【6】~【10】に当てはまる人は、たとえ今は大丈夫でも、いつ症状が発生してもおかしくないので、ご注意ください。

 夏型過敏性肺炎の症状は、咳や痰、発熱、だるさといった風邪のような症状から始まります。風邪に似た症状なので、ほとんどの人は大した病気と思わず、放置しがちです。病院でも風邪と診断されることが多く、抗生物質などで一時的に症状が改善される場合もあるので、治ったように思われることもあります。ところが、翌年の夏近くになると、また咳が出始めるのです。

 こうしたパターンを繰り返すうち、慢性化して肺の機能がしだいに弱り、ちょっとしたことで息切れを起こすようになります。さらに悪化すると肺が萎縮し、酸素交換がうまくできなくなって息苦しくなり、時には呼吸不全から危険な状態にもなりかねません。

 このように、夏型過敏性肺炎は、風邪に似た症状だけで終わる「急性型」と、そこから症状が進み、最終的には肺に重大な機能低下を引き起こす「慢性型」の2種類に分けられます。

「慢性型」の場合は、抗原から離れても症状は回復せず、繰り返し肺にアレルギー反応が起こることで機能障害が起こるようになりますから、毎年夏に咳が続くという人は、医療機関での受診をおすすめします。

 症状が風邪とよく似ているため、わかりにくい夏型過敏性肺炎ですが、チェックシートの【4】もしくは【5】はわかりやすい特徴と言えます。原因が自宅のカビなので、自宅を離れると症状が治まってしまうことが多いのです。例えば旅行や帰省、出張で、ホテルなど自宅以外の場所に数日間滞在した時は、咳がほとんど出ない、ところが自宅に戻ったらまた症状が出る、なんて人は典型的ですね。勤めている人の場合は、職場にいる時は調子がいいのに、帰宅すると咳が出るケースも見られます。

 ただし、慢性化して肺の機能が弱ってくると、抗原となるカビがなくても咳が出やすくなります。できるだけ初期の段階で、旅行中などに症状が軽くなるかどうかを観察し、可能性があると思ったら早めに受診しましょう。その際は、上記【1】~【5】の症状であることをきちんと医師に告げましょう。

 夏型過敏性肺炎の原因となる「トリコスポロン」というカビは、温度が20℃以上、湿度が60%以上になると活動を始め、高温多湿になるほど繁殖し、胞子をたくさん飛ばします。繁殖しやすい場所は、本来は古くなった木や畳、カーペットなど。そのため古い住宅に多く見られますが、最近はマンションなどの気密性の高さが、カビの繁殖に適した室内環境を作る要因となっています。特に風通しが悪く、湿度が高くなりやすい場所は要注意。キッチンの周辺、洗面所やバスルーム、脱衣所、洗濯機置き場近くの床、北側の押し入れや窓のサッシ周りなどをチェックしてください。

 エアコンが「トリコスポロン」の繁殖場所となることが多いので、エアコンを一年中使用する状況にある場合は、まれですが、一年中症状が出てしまうこともあります。

 転居して清潔な住宅に移って初めて症状がなくなったという患者さんも多くいらっしゃいます。転居までしなくても、カビが繁殖している場所を全てリフォームすることも有用です。医師と相談してみましょう。

 しかしながら、対策の原則は、まずカビを除去し、再び繁殖しない環境を作ることです。水洗いできる場所は、通常のカビ取り剤などで除去し、乾いてから消毒用アルコールを塗布すると、カビが生えにくくなります。キッチンや洗面所などの水回りは、カビを除去したら、日頃から水はねを拭き取り、湿気を防ぐことが大切。水はね用の雑巾を近くに常備し、こまめに拭き取るようにしましょう。バスルームは、入浴後に壁の湿気を拭き取るだけでも、カビの発生を抑えられます。カーテンに隠れた窓辺もカビが発生しやすいので、ホコリや汚れをためないように、こまめに掃除を。エアコンも週に1度は掃除することが大切ですが、しばらく使わない時は、最後の日に送風運転などで内部を乾燥させると、カビが生えにくくなります。ただし、すでに発生していると思われる場合は、専門業者などに依頼してクリーニングしてもらったほうがいいでしょう。

──夏型過敏性肺炎チェック項目──

【1】夏になると咳や痰が出る

【2】夏になると発熱や倦怠感など体調が悪くなる

【3】自宅に長時間いると咳がひどくなる

【4】外出中は平気なのに家に帰ると体調が悪くなる

【5】旅行などで自宅を離れると体調がよくなる

【6】家の掃除をあまりしない

【7】エアコンのクリーニングをしていない

【8】浴室や台所がカビ臭い

【9】いつも部屋を閉め切っていて換気をしない

【10】自宅もしくは仕事場の建物が古いなどカビが繁殖しやすい環境にある

※【1】~【5】は夏型過敏性肺炎の可能性あり。【6】~【10】は夏型過敏性肺炎になりやすい環境です。

◆監修 森田豊(もりた・ゆたか) 医師・医療ジャーナリスト・医学博士。レギュラー番組「バイキング」(フジテレビ系)など多数。ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修も務めた。

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