さて、映画の内容に戻れば、有村扮する夏美は、無邪気で陽気な性格として描かれるが、男を無意識に惑わすシーンも多い。これに関連して、映画の重要なアイテムとなるバイクが登場する。夏美は排気量400ccのバイクを愛用しており、慎吾をバイクのタンデムシートに乗せるシーンが何度も登場するのだ。原作で、こんなシーンが出てくる。
〈頼りないほどに華奢な夏美の腰にしがみつく。そして、いつも言われているとおり、両膝で彼女の小さなお尻をぎゅっと挟み込んだ〉
夏美は、慎吾の下腹部をお尻に当てるように指示し、そして飛ばしまくるのだ。
そんな夏美の“本領”は、前述の山奥の「離れ」で発揮される。物置同然になっていたその建物で「短期集中同棲」するために、掃除を終わったあとに、汗まみれになった夏美がこう言い放つ。
「うわぁ‥‥。ついに終わったかぁ‥‥。めっちゃ疲れたけど、わたしたちの夏季限定の愛の巣、完成だぁ」
そう言ってはしゃぐ夏美の頬に慎吾が両手を添え、人目がないのをいいことにキスを交わす‥‥。
「原作では、ここで場面が切り替わり、離れを貸してくれた老母子に『作業』の終了を伝える場面に変わる。キスをする際に相手の首に両腕を回すなど非常に積極的な女の子として描かれていますから、このあたりで、廣木監督の濃厚な濡れ場の演出があるはずですよ」(映画記者)
他にも、露天風呂に入り、仕切り越しに2人が甘い言葉を交わすシーンがある。原作では、この山奥での1カ月の間に、夏美は、慎吾に写真を撮られる日々を過ごしながら、離れを貸してくれた老母子の「哀しい過去」を知っていく。
やがて夏が終わり、時が過ぎ、2年が経過したラストシーンが、冒頭で描写したシーン。老母子の母親が亡くなっていたことを知り、その墓前で、夏美が妊娠を告白するのである。ひと夏の同棲から、ずっと身体を交じり合わせ続けてきた成果を恥ずかしそうに明かすシーン。映画となれば、その証左となるべきシーンが「濡れ場の匠」の手で、挿入される余地が存分にあるというストーリー展開なのだ。
また、原作では、物語上、夏美の幼稚園教諭姿、ライダースーツ姿、浴衣、割烹着、喪服姿が描写される。映画では、有村のこんな服装の変化も楽しめそうだ。もちろん慎吾とは何度も熱いキスを交わす場面もあるが、直接的なセックス描写はない。が、映画評論家・秋本氏はこう期待を込める。
「実は、原作に濡れ場があるものほど映画でカットされることが多い。今回は逆に濡れ場がなく、見せ場を作らなくてはならない。だからこそ過激かつ大胆な表現に取り組めるのではないでしょうか。有村自身も20代後半に大人の女優として生き残るため、このあたりで濡れ場に挑戦する『通過儀礼』が必要でしょう。まだ残る美少女の面影を吹っ切る勢いで、大胆にやってほしいですね」
映画記者によれば、「この進捗状況だと公開は来春ぐらいではないかと思います」というこの作品。有村の一皮も二皮も剥けた「艶技」が今から待ち遠しい。