高視聴率が続く日本テレビの看板番組「笑点」。「ということはCMなどで大儲け‥‥」と思いきや、さにあらず。寒いフトコロ事情の背景には、数字を支える視聴者の偏りがあった。
最新視聴率18.4%(関東地区、9月4日放送分)は、娯楽部門で1位。「笑点」は変わらぬ高視聴率を続けている。
「CM収入は民間放送局の大きな収入源で、価格を決めるのが視聴率。数字はすぐには出ないので、結果を受けて、遅れてその枠の値段が決まるのです」(広告代理店社員)
この価格原理から考えれば、「笑点」こそ日テレの稼ぎ頭ということになる。だが、ある日テレ関係者はため息交じりにこう明かす。
「『笑点』視聴者のほとんどが、後期高齢者で平均年齢70歳を超えています。老人しか見ないので、基本的には儲かってないのです」
いわゆる「視聴率」とは「世帯視聴率」のこと。現在、広告代理店、テレビ局、スポンサーがシビアに注目するのは「世代別視聴率」だ。ちなみに、「世帯別──」はテレビ業界で“見た目”と呼ばれている。
スポンサーにとって最も“おいしい”のは、購買力のある20~40代が見る番組。70代を中心とした層は、「シャンプーなら〇〇」など、決まったものを買うためCMを出す意味がない。
「季節ごとに新機種を出す携帯電話の会社や、化粧品会社。イベントを告知するディズニーランドなどのお金のある企業は、『笑点』にCMを出しません」(前出・日テレ関係者)
80年代まで「笑点」は、「ゴホンと言えば」の「龍角散」による1社提供。テレビ創成期には、枠を永続的に買ってくれる「1社提供」は局にとってありがたい存在だった。
「『1社』は値段が固定されていますので数字が上がれば、企業が多く払わずに済み得をします。下がれば枠の値段が安くならないので、局が得をするという矛盾を含んでいました」(前出・代理店社員)
高度経済成長期終了後、「1社提供」は、数字を出してCM枠を高く買ってほしい局にとって負担となる。「笑点」のスポンサーも複数社提供となっていった。ところがである。
「高齢化社会にあって“見た目”は、家にいる老人が番組を見ると20%に届いてしまうのです。『笑点』と似たような傾向を持っているのが『大相撲』。購買力を持っていない層しか見ないという背景があって、『笑点』のCM枠は、他の番組に比べるとかなり安く、実は、赤字にはなっていないというくらいのレベルなのです」(前出・日テレ関係者)
5月には、勇退した桂歌丸(80)に代わって、春風亭昇太(56)が大喜利の司会となり、林家三平(45)が新メンバーとなった。その目的はメンバーだけではなく、視聴者の若返りにもあったという。
現在、「笑点」には、「笑点 特大号」「笑点デラックス」という派生番組がある。いずれも「BS日テレ」で放映されている理由もまた、視聴者の高齢化にあるという。
「設備にお金のかかるBSは、高齢者しか見ていないんです。若い人はそのお金がないので、BSはほとんど見ません。ということで、『笑点』はBSにマッチしているんです。ちなみにBSの『笑点』は『龍角散』の1社提供です」(前出・日テレ関係者)
「BS」と「NHK」は高齢者との親和性が高く、民放のBS番組は、ほぼ高齢者向けになっているという。
「多くの番組がWeb展開をしますが、『笑点』は力を入れていません。視聴者がWebを見ないので。こうなると、派生商品をネットで大量販売という仕組みも考えにくい。局としては『看板』ということで、終了はできません。しかし、視聴者の世代を若返らせなければ、いつ『打ち切り』と言われてBSに引っ越ししても、おかしくないのです」(前出・日テレ関係者)
そう遠くない日に、日曜夕方5時半の“座布団”は没収となる!?