サッカー日本代表の綱渡りが続く。18年ロシアW杯アジア最終予選はB組3位と低迷。バヒド・ハリルホジッチ監督(64)は進退問題を吹き飛ばすだけの采配を見せられず、いよいよ日本人監督への交代が現実化してきた。
ハリルジャパンは最終予選前半戦のヤマ場、イラク戦とオーストラリア戦を1勝1分の勝ち点4でしのいだ。ただし、その戦いぶりは、W杯5回連続出場中の貫禄が見られず、格下のイラクにロスタイムの辛勝。オーストラリア戦でも先制点を奪いながら逃げきれなかった。サッカーライターの渡辺達也氏も嘆く。
「ここまで日本のサッカーが落ちてしまったかと思うと寂しいかぎりですね。特に(B組の)最大のライバルであるオーストラリアとは、常にがっぷり四つに組み、意地と意地のぶつかり合いの戦いをしてきた。それが(今回は)引いて守ってのカウンター狙い。アジアの戦いで、ここまで守備重視の試合なんて見たことがありません」
監督続投の目安と言われた「勝ち点4」こそクリアしたものの、JFA(日本サッカー協会)関係者の顔色はすぐれなかった。スポーツ紙記者が話す。
「戦術にしても選手交代にしても、JFA幹部は消極的な采配に首をかしげていました。2勝すれば、初戦敗戦のマイナスを取り返して、振り出しに戻れたのですからね。最高責任者の田嶋幸三会長(58)は続投を明言せず、西野朗技術委員長(61)はスケジュールを変更して帰国。11月15日のホームでのサウジアラビア戦(B組1位)が前半戦の大一番となるだけに、すぐにも今後についての会議が開かれる可能性があります」
結論しだいでは、サウジ戦の結果にかかわらず電撃交代劇が現実味を帯びてきたのだ。まさに「解任ロスタイム」に突入。民放局スポーツ担当デスクが話す。
「采配への疑問視は選手にも広がり、求心力が低下している。関係者から『選手の心が離れ始めていることが心配だ』という声が上がっているほどです。本田圭佑(30)のワントップという勝負手はみごとも、DF陣は監督の指示ではなく自主的に5バックの布陣に切り替えて守り、ハリル監督の審判団への激しいクレームにも『大人気なさすぎる。やりにくくてしかたない』と、不満が絶えない」
ハリル監督がJFA関係者ばかりか、選手からも見限られ始めている中、次期監督候補に急浮上した手倉森誠コーチ(48)の動向も気になる。前出・民放局スポーツ担当デスクが続ける。
「今月中にハリル監督の進退会議が行われるとも一部で報じられていますが、情報源は手倉森コーチ周辺だともっぱらです。選手と密にコミュニケーションも取っていて、『いつでも任せてくださいよ』といった雰囲気で、代行監督就任にやる気満々です」
現在、次期指揮官候補に浮上しているのは、手倉森コーチの他に3人。川崎フロンターレを率いる風間八宏監督(54)とガンバ大阪の長谷川健太監督(51)、サンフレッチェ広島の森保一監督(48)だ。中でも、風間氏と長谷川氏が一歩抜けているという。サッカー専門誌編集者が話す。
「全て日本人というのは、田嶋会長の意向が強い。就任後、母校の筑波大で行われた講演会で『日本のコーチレベルは上がっている。日本代表を日本人監督が率いる日も近いでしょう』という旨を熱弁していました。後日、懇親会の席では、後輩の風間氏と長谷川氏の名前を直接あげている。2人ともメダル獲りを託される20年東京五輪の代表監督候補として有力ですが、W杯出場ピンチとなれば承諾する可能性が高い。風間監督はタイミングよく、10月11日に今季限りで川崎退団を発表しました。長谷川監督も、契約が1年残っているだけで、JFAが違約金さえ払えば問題はありません」
予断を許さない代表監督交代劇だが、前出・渡辺氏はこう話す。
「日本はここまで全て先取点を奪ってきたにもかかわらず、まさかのB組3位と崖っぷちです。今、最も大切なことは、この悪い流れを変えること。監督交代は好手だと思いますね」
ハリルジャパンの見納めが近づいている。