1985年の阪神優勝とともに、関西発の事件が多かったのも80年代の特徴だった。その代表がここに紹介する3つの事件。欲と色が複雑に絡んだ事件に斬りこんだ。
81年3月25日、三和銀行(当時)大阪茨木支店において1億3000万円の架空入金が発覚する。入金オンライン操作をしたのは預貯金係のI・M(当時32)。M子は当日午前「歯医者に行く」と言い残し銀行から外出、そのまま帰ってくることがなかった。14年間、真面目に働いてきたM子は周囲からの信頼が厚かった。だが、端末機や伝票記録を調べたところ、架空入金をしたのは姿を消したM子だった。
その後、M子は1億3000万円のうち現金500万円を引き出しマニラへ逃亡したことが判明、さらに犯行はM子の単独ではなく、それを指示した恋人のM・T(当時35)の存在も明らかになっていく。
では、M子はどんな女だったのか。81年10月1日号はこう伝えている。
〈府警詰め記者がいう。「刑事がふるいつきたいほどいい女やいうてましたから、男がいるとは思うてたんだけど、まさかこれほどまでとはねえ。とにかく、府警が把握している男友だちが40人、そのうち肉体関係のある男が10人おったというんやからね」〉
妻子持ちの愛人Mと親密になったのは80年。Mは経営する会社が倒産を目前にしてM子に横領計画を持ちかける。
「マニラで日本料理屋を開こう」
マニラでの再会を約束して二人は別れるのだが、5カ月待ったものの、Mは現れなかった。仕方なく、Mの友人、A氏を頼るが……。
マニラではこのA氏の世話で長期滞在用アパートに宿泊。
「ただ、「ヤクザアパートなんていわれてましてね、この手のアパートの80%が日本からくる暴力団員に使われている」(同号)
5カ月後、A氏の友人の通報で逮捕されるのだ。ところでM子とA氏の関係だが、
〈「あれだけの女が5カ月も男なしで暮らせるワケがないでしょ」(マニラ特派員)〉
逮捕されたM子とMは法廷で睨み合うシーンもあったという。