テリー プロレスファンの反応も気になりませんか。だって蝶野さんは「黒のカリスマ」「黒の総帥」じゃないですか。
蝶野 でも、番組を観てくれている人は、レスラー時代を知らない人が多いんですよ。俺のファンって、だいたい45歳前後だと思いますけど、3年前から出ているNHKの「天才てれびくん」はまず観てないですしね。たぶん、唯一観ているのは、大みそかの(ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!)「笑ってはいけない」シリーズのビンタぐらいでしょう。
テリー ハハハ、確かにあれは視聴率も高いし、大人気ですから。
蝶野 あれも、もう10年くらい出ていますからね。俺のプロレスなんか知らない今の中高生とか20歳前後ぐらいの人たちにしてみたら、もう「ビンタのおじさん」っていうイメージしかないみたいです(笑)。
テリー それはしかたないのかもなァ。長嶋(茂雄)さんだってスーパースターなのに、ユニホームを脱いだ時から、若い世代には「甲高い声の、変な英語を使う人」だからなァ(笑)。
蝶野 バラエティに出るようになって、初めて出演者の皆さんそれぞれが、すごいキャリアを持っていて、同じ場所で競争しているんだと意識することができましたね。
テリー そもそもバラエティは好きだったんですか?
蝶野 俺だけじゃなく、レスラーって基本的にやんちゃですし、イタズラばっかりしてますから。人を楽しませたり、喜ばせたりするのは好きですよね。
テリー やっぱり自己演出ができなかったら、プロレスラーになれないものね。
蝶野 ただ、バラエティで笑いのプロの人たちの中に入ってしまったら、レスラーのやることなんて幼稚園レベルで、まったく通用しないです。
テリー 特に、今のお笑いの人たちはレベルが高いですからね。
蝶野 今まではゲストで行って、ただ自分のパフォーマンスを出せばよかったんですけど、今は1時間の生放送という限られた時間の中で、自分をアピールしなくてはいけない。それはすごく難しいです。
テリー プロレスの時には、あまり自己アピールなどは考えていなかった?
蝶野 日本のプロレスは、ある程度ハンディカメラも追いかけてくれるから、試合中そこまでカメラを意識する必要がなかったんです。でも、マサ(斎藤)さんにアメリカに連れて行ってもらった時に、意識が変わりましたね。
テリー それは、どういうことですか。
蝶野 例えば、マサさんがボストンクラブなんかをキメると、会場の観客じゃなくて、カメラに向かって「オオッ!」とアピールするんですよ。「アメリカでは、メインのカメラがどこにあるかを意識しろ。会場にいる1万人じゃなくて、テレビの向こうの何十万人にアピールしろ」って言われたのが、すごく印象に残っています。
テリー そうか、「魅せるプロレス」に開眼したんですね。
蝶野 だから俺も、いちおうカメラありきの業界で育ってきたつもりだったんですけど、バラエティというのはまた全然違いますね。言葉遣いとか、言ってはいけないこととか。
テリー 1年ぐらいやれば慣れてきますって。
蝶野 そうですかね、今はもう精いっぱいですから。今年の1カ月は1年ぐらいに感じられますね(笑)。