約2年に1本ペースで1989年から今日までに17本の映画を監督されている殿が、映画クランクイン前にほぼ必ずやる行為がダイエットです。
監督として、さらに役者としても映画に参加する、“撮って出るタイプ”の殿は、映画が始まる2カ月程前になると、
「朝から何も食ってねーな」
「俺は弁当はいいから。お前ら食べちゃえ」
等々、“オイラは今、絶賛ダイエット中である”といったアピールを周りにガンガンされ、大体6キロ程落としては映画の撮影に挑みます。
で、殿はまず顔から痩せていくタイプなため3キロぐらい落とすと、すぐにその成果がはっきりと現れ、あからさまにシャープな顔つきへと変化するのです。
そうなると、マネージャー、弟子、番組のスタッフさんなどが口々に「殿、痩せましたね」「たけしさん、痩せました?」等々、その“ダイエット成果”について指摘します。こういった時、殿は「そう?」といいながらも、手であごの辺りをさすりながら、何度も鏡で顔を確認され、“うん、確かにオイラは痩せた”と言わんばかりに、人知れず満足な表情を浮かべるのです。
だいぶ昔、ブラッド・ピットが主演した映画「ファイト・クラブ」が公開された頃、腹筋がバキバキに割れたブラピの肉体美を、CMにてやたらと目にすることがありました。
その時期、殿も絶賛ダイエット中だったのですが、ある日、楽屋にて着替えのため上半身裸になった殿の体を見ると、少しばかりですが、はっきりと痩せられていたため、持って生まれた太鼓持ち気質のわたくしは、とにかく殿のダイエット行為を何とか賛美したく、つい「殿、痩せましたね~。まるでファイト・クラブのブラッド・ピットじゃないですか」と口走ってしまったのです。自分の発言とはいえ、〈さすがにブラピは言い過ぎたか?〉と、瞬時に後悔の念を胸の内で抱いていると、殿は一旦わたくしの発言を「うんうん‥‥」といった感じで飲み込んだ後、すぐさまボクシングのファイティングポーズをとると、1人勝手に軽いシャドーボクシングを開始されたのです。
“まさか”、殿はわたくしのブラッド・ピット発言をお気に召していたのでした。
そんな、“肉体褒められるの大好きっ子”な殿が、少し前実践していたダイエット方法が、プールでのウォーキングダイエットです。
週3日のペースで、トレーナーの指導のもと1時間程水中ウォーキングをされていた時期があったのですが、殿いわく、
「今教わってるトレーナーが結構マニアックな俺のファンで、歩きながら昔の話をいろいろと聞いてくるんだよ。だから俺も歩きながら、あの話はあーでこーでって漫談やりながら歩いてんだから。結構しんどい1時間だぞ‥‥」
殿の“おしゃべりダイエット”、確かに痩せそうです。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!