「いかにもしつこいプレイしそうだな」
日夜放送されている、とある通販番組を楽屋で見ていた殿は、自信たっぷりに商品を紹介していた、見るからにワンマンで肌の脂ぎった「健康食品会社の社長」を見ては、ニヤニヤしながら“勝手な決めつけ発言”を炸裂されたのです。
ちなみに殿は、通販番組が大好物であり、とにかくやたらと見ていて、怪しい商品を販売する怪しい出たがり社長などを見つけると、殿のライフワークである、“新たなカツラ装着者”を発見された時同様にテンションが上がり、
「お前、○○の通販見た? あそこの社長怪しいな」
と、実に嬉しそうに報告されてきます。ちなみに、“通販の殿”といえば、必ず思い出す夜があります。5年程前、かなり遅い時間に殿より直電が入り、
「映画の台本やるから、ちょっとパソコン持って来てくれよ」
と、指示を受け、ふたりっきりで殿の仕事場にて台本会議を決行した夜がありました。この時、殿は一時流行っていた「付けるだけで腹筋が割れるベルト式の健康器具」を人知れず購入されていて、かなりでっぷりとされたお腹の上に派手なベルト型の器具をギュウギュウに巻きつけ、そのベルトから時折「ピーピー!」といった音が鳴り響く中、
「次のシーンはよ‥‥」
と、真剣に台本作業を遂行していたので、そのお姿がなんだかおかしく、つい笑みを浮かべてしまうと、殿から、
「お前、何ニヤニヤしてんだよ」
と、軽いツッコミを頂戴したのです。
まー殿の腹筋割れ願望はさておき、こちらの連載でも何度か書きましたが、殿の“何の根拠があって言っているのかさっぱりわからない、圧倒的な決めつけ発言”は本当に多く、その大多数は、“シモにまつわる発言”となります。
「おい、あいつアソコでかそうだな」
「あーいうやつに限って、Hの時でかい声出したりするんだよな」
等々、フランスから文化勲章を2度も授与された方の発言とは、とても思えないレパートリーの数々です。
で、こういった殿の決めつけ発言は、時折、自分に向けても言い放たれます。
つい先日も、酒席にて“昔はなんであんなにHがしたかったんだろう的な話”を切り出され、そこから、“たけちゃんの、ヤンチャな時代のモテキ漫談”をたっぷりと聞かせていただいたのですが、殿は最後に、“しかしHなことをするために、ずいぶんと無駄な時間を費やしたもんだ的な結論”で締めると、最後の最後にしみじみと、
「俺もアソコがなかったら、もっと出世してたのにな」
と、漏らされたのです。
この発言を聞いたわたくしは即座に、“芸能史上、かつて例のないほど恐ろしい出世”を遂げた殿に対し、〈スケベであろうとなかろうと、英雄ビートたけしには、そんなことまったくもって問題なし!〉といった思いを強く抱いたのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!