先日、殿や番組スタッフさんらと、「明日は東京マラソンですね」といった話をしていると、「マラソンだったらあれだよ」と、殿が切り出してきたのです。
「昔、長嶋さんがマラソン大会のスターターに呼ばれた時、右手にピストル持って、『よーいどん!』って鳴らそうとしたら、その日は雨降っててよ。ピストルの火薬がしけってて、『ド~ン』って音が出なかったんだよ。何度やっても『カチャ』って音しか出なくてよ。そしたら慌てた長嶋さんが、いきなり『ど~ん!』って口で叫んで、『みなさん。どんですよ、どん、どん、ど~ん。さー走ってください!』だってよ。あれには笑ったな」
この話が呼び水となって、“俺が見た長嶋さん”といった“テッパンの面白漫談”がスタートしたのです。
で、ひと通り、“長嶋さん爆笑伝説”を話された殿は、急に落ち着いたトーンに切り替えると、
「去年、長嶋さんが国民栄誉賞もらったでしょ? あれさ、安倍さん(総理大臣ね)に会った時、『王さんはもらってるけど、長嶋さんはまだ国民栄誉賞もらってないですよね。松井選手と一緒にあげたら、安倍さんの人気も上がりますよ』なんて冗談言ってたら、安倍さんがその気になっちゃったんだよ」
と、“オイラは長嶋さんの国民栄誉賞に、ちょっとは貢献したんだよ”といった感じで、少しばかり照れながら告白されたのです。
ちなみにこの“告白”は、去年末に放送された特番で殿が話されていて、その後ネットでかなり話題になりました。この時の殿は、テレビの中で一度話されたことを忘れていたようです。
が、こういった話は、“殿から直接聞くことに意味がある”と強く自負しているわたくしは、すぐさま「殿、その後、長嶋さんからお礼の電話があったんですよね」と、以前、殿から聞いた、世間にはあまり知られていない“その後”のお話を振ると、
「そうだよ。俺がよく行く飯屋に長嶋さんから電話があってよ。『今回の国民栄誉賞は、たけしさんがいろいろと動いてくれたんですってね。ありがとうございました』ってお礼言われたんだよ。あれは焦ったな~」
と、大変嬉しそうに話されたのです。そして、「長嶋さんは優しいからな‥‥」と、新たに切り出すと、
「俺が謹慎中の頃、『たけしさんが落ちこんでいると思うから』って、長嶋さんが俺をゴルフに誘ってくれたんだよ。それで当日、ワクワクしながらゴルフバッグ持って待ち合わせ場所に行ったら、長嶋さんがやってきて『あれ? 今日は何ですか? たけしさんもゴルフですか? いいですね。じゃー』って言ってそのままズンズン通りすぎて行っちゃったんだよ。アレ、おかしいなって思ってたら長嶋さんが赤い顔して戻ってきて、『ごめんごめん。今日は僕がたけしさんを誘ったんでしたね。行きましょ』だって。あれにはコケたよ」
このお話も、いちいち最高です。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!