「新しい“ゼロゼロセブン”はヒットしてるのか?」
去年の暮れ、殿が珍しく公開中の大作映画、「007 スペクター」に興味を示してきたことがありました。ちなみに、わたくしも殿同様、「007」を、「ダブル・オー・セブン」と呼ぶのではなく、「ゼロゼロセブン」と呼ぶ、アラフォー世代の、“昭和っ子”であります。
それはさておき、内容もさることながら、シリーズ中最大の制作費をかけ、世界中でしっかりと大ヒットしている最新の「007」を、すでに拝見していたわたくしが、“興行的にも内容的にも、大変な優秀作品である”といった感想を殿に述べると、
「へ~。すげ~な。ちょっと見てみて~な」
と、さらに食いついてこられたのです。
しつこいようですが、殿が公開中の新作映画に興味を示すことなど、ほぼありません。かなり昔、わたくしが、「俺たちフィギュアスケーター」という、死ぬほどバカバカしいコメディ映画を拝見した時、「殿、先日男同士でフィギュアスケートのペアを組むバカ映画を見てきたのですが、パイルドライバーのような形になって、お互いの股間に顔を埋めて、“立ち69”をしながら滑るシーンが最高に笑えました」と報告すると、
「いいな! それ!! その69しながらスケートするやつ、DVD出たら持ってこいよ」
と、映画というより、男同士の69のシーンそのものに食いついてこられたことがあったぐらいです。
まー殿の、あくなき下ネタ執着ぶりはさておき、「007」です。
「007」の話題から、昨今の洋画の大作主義、及び、その制作費の高騰といった話に移行すると、殿は、かつてキアヌ・リーブスと共演した、ハリウッド映画「JM」のことを思い出され、
「あっち(ハリウッドね)はとにかくいちいち細かいからな。俺が薬を飲むシーンがあったんだけど、何種類も薬のサンプルを持ってきて、『何色のどの薬がお前は好きなんだ?』って、どうでもいいことを聞いてくるからな」
と、自身が体験した、ハリウッドシステムについて語りだしたのです。さらに、話は殿がアメリカで撮った、北野映画9作目「BROTHER」の話題になり、
「あの時はよ、主要なスタッフはいつも俺の映画をやってる日本人を連れてって、あとのスタッフは向こうのやつらを使ったんだけど、俺がアメリカ人のスタッフに『日本では何か頼まれたら、“うるせー、バカ野郎!”って返事をするのが礼儀だから、何か仕事を頼まれたら、元気よく言うように』ってウソ教えたんだよ。そしたら照明やってる日本人のチーフがアメリカ人に、『これを○○してくれ』って頼んだら、そいつが元気よく『うるせー、バカ野郎!』って返事してから働きだして、照明のチーフがムッとしてたな」
と、映画に携わる方なら誰もがあこがれるアメリカでの映画制作体験を、しっかりとオチを交えて語る、いつもの殿なのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!