泥縄だった計画停電の対応
そもそも国側と東電のさや当ては、この3号機問題直前から始まっていた。
東電が13日夜に発表した、14日からの戦後初の計画停電を巡ってである。
14日午前3時過ぎ、東電本店にいた小森明生常務取締役が次のように言ったことに始まる。
本店・小森常務 じゃあ、ちょっとすいません。この会議システムはこちらのモードにさせてください。申し訳ないですけど。はい、よろしくお願いします。
この時点で柏崎刈羽原発、福島第一原発、福島第二原発、福島県オフサイトセンターとを結んでいたテレビ会議の音声接続が切断される。その直後、藤本孝副社長が切り出した。
藤本副社長 第1発目、6時20分からの計画停電をやることについては絶対に認めないと。それはですね、(枝野)官房長官と福山官房副長官と蓮舫需給対策大臣かな、その3人からですね、人工呼吸器、人工心肺、これを家庭で使っている人をお前は殺すことになると。お前がそれを承知して計画停電をやるということは、俺は殺人罪をお前に対して問うと、それをやったら、と言われました。「殺人罪」とは穏やかではないが、要は停電により生命に危機が及ぶ人たちへの配慮を十分に行って、なるべく計画停電の時間と範囲をしぼるようにという官邸側の要請だったのである。
藤本副社長 できれば10時から、10時、11時できるだけ引っ張ってほしいということで、今、官房長官から非常にきついお言葉でですね指示をされまして、3時までにですね、需要をどう落とすかということ、要するにお客さんに大臣命令だ官房長官命令だということを言えと、いうことでできるだけ需要抑制をお前たちが努力して依頼しろと。それからその結果を4時までに持って来いということで話をします。(時間は全て14日午前)
藤本副社長からは、需要抑制のお願いと給電の調整で、14日午前の停電は回避する旨が言い渡される。そして問題はその伝達である。
本店 すみません。広報面ではどういう対応に。
藤本副社長 広報はやらない。
本店 えーと、何もしない?
藤本副社長 やらない。これは第1ブロック、第2ブロックをやらないということについては広報しない。それがもし必要であったら、投げ込みか何かでやるけども、今のままだったらやるとかえって混乱するから、うん。(中略)
本店 全部やるということで、需要が落っこちてきたから結局やらずに済んだという形にするしかないよ。
本店 じゃ、事後的に言い訳というか、そういう言い方をすると。
結局、東電は14日午前10時過ぎに第1グループの計画停電は行わなかったと発表する。13日の計画停電発表を受けて各種事業所などが緊急対応を行ったにもかかわらず、あとになって実施しなかったと発表されたことで、東電は各方面から批判されたが、裏側がこのような泥縄な対応で決められていたのである。