「可能性は小さいことにして」
だが、3号機では13日午後になって原子炉建屋周辺で最大で毎時300ミリシーベルトという高い線量が記録されたことで、1号機同様の水素爆発の危険が高まったとして作業員が一時退避する事態に発展した。
ここから約4時間後の午後7時前のテレビ会議システムでは、本店の画面で、東電の勝俣会長が、官邸の武黒フェローと電話で話す様子が映し出され、勝俣会長がこう発言する。
「もしもし。はい、うん。あのね、1の3(福島第一原発3号機のこと)はベントね、開けれそうなのよ。うん、水素? 水素(爆発)の問題? あーそれを言ってんの。それはまあ確率的には非常に少ないと思うよ。だから、あの、そんな‥‥をしてね、国民を騒がせるのがいいのかどうかの判断だけど。逆に言うと次の社長記者会見でそれを聞かれたら、それは否定するよ、それはやっぱりありえないと。うん、いやだから、‥‥ベント開いちゃうから恐らく消えてくれるかと思うよ。まーありえるけれど、結構逃せば何とかなるかな。うん? うん、そう言ってそうしてもらってさ。あの、そういう話だと思うけれど、だから、うん、まーそうだけど、そういうことで、‥‥して可能性は小さいということで。会見は20時。だから19時はあとすぐだから、そこに集中する‥‥。よろしく、はい」
勝俣会長自身はかなり事態を楽観視していたことをうかがわせる。しかも、あろうことか記者会見で3号機の水素爆発の可能性を意図的に過小報告しようとしていたことが、この発言からは明らかだ。
そして3号機の事態は徐々に悪化していく。
ドライウェル(D/W)と呼ばれる原子炉格納容器本体の圧力が14日午前6時35分には520キロパスカルまで上昇したからだ。
これは3号機の格納容器が設計上耐えられる圧力を軽く超えた数字だ。最悪、格納容器が破損して大量の放射性物質が周辺にまき散らされることになる。直後のテレビ会議でも切迫感が増している。
吉田 武藤さん、武藤さん。
オフサイトセンターの武藤副社長 はい。
吉田 この状況で、もう何もできなくなっちゃうんですけども、現場の作業員、うちの社員、1回こちらに退避させてもよろしいですか?
武藤 了解しました。
吉田 待避命令出します。
実際、このあと最悪の事態である3号機の水素爆発が発生することになる。
こうしたさまざまな局面で、実は東電のみならず、政府、保安院までもが意図的な情報隠しや過小評価を行っていたことがテレビ会議映像を追うと明らかになってくる。 (以下次号)