スポーツ

プロ野球「師弟の絆」裏物語 第3回 谷繁元信と権藤博の「一意奮闘」(3)

「アイツは古田を追い抜いた」

 また当時の権藤は全体ミーティングをやらない主義だった。その理由は選手の自主性を失わせるというものであった。

「スコアラーが中心になってやる全体ミーティングはなかったけれど、気づいた場面で、『何であの球を選択したのか』と理由を聞かれました。結果については、何も言いませんでしたけど、そのプロセスについては、いろいろ教わった」

 谷繁は権藤との個人ミーティングについて、こう話していた。それはある意味では「やるのは選手なのだから、選手の判断を大切にしたいから」という理由であった。

 こうした選手の自立性に任せた“采配”を公然と批判したのは、当時、阪神の監督だった野村克也だった。「バントをしない」「ミーティングはしない」「夜間練習はしない」という権藤流の野球について、厳しく批判していたことがある。

 だが、横浜で優勝した98年の暮れ、外国人記者クラブに招かれた講演で、記者の質問にこう答えている。

「ID野球かどうかわかりませんが、来年、阪神と戦っていても、絶対に負けることはありません。阪神とウチの選手を比べたら、明らかにウチの選手がいい。特に捕手が違います。やるのは選手なのですから」

 プロの集団である以上、自主的に判断できるというような体制作りが必要と考えていた。そして権藤は、谷繁については事あるごとにこうホメあげた。

「アイツはついに古田(敦也=ヤクルト=)を追い抜いた存在になった」

 ところが翌年、チームの成績が低迷すると、選手の自主性を尊重する権藤の采配に内部からも不満の声が上がるようになる。そして00年のシーズン終了後に4年間の契約満了をもって、森祇晶に監督を交代する。

 そうした中で谷繁は、野手陣の中でただ一人、最後まで権藤の考え方を支持した。そんな経緯もあり、しだいにチーム内での居場所を失っていく。

 そして、02年に谷繁はFAで中日に移籍した。この決断の際にも谷繁の脳裏に浮かんだのは、権藤が言い続けてきた「理屈や経験よりも今これからを戦う現場の感性を考えろ」という言葉だった。「どうせ命まで取られないのだから行け」という攻めの気持ちが、谷繁を前に向かせ、新天地へ向かう後押しとなったのだ。

カテゴリー: スポーツ   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
3
【高校野球】全国制覇直後に解任された習志野高校監督の「口の悪さ」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
4
日本人に大打撃!タイ政府「外国人締め出し」で長期滞在とビザ取得が困難に…そして口座凍結まで
5
ヤクルト・村上宗隆「上半身のコンディション不良」って何?「ポスティング移籍金」に影響するからと…