故意か、偶然か? お笑い芸人を中心としたバラエティ番組には“事故”が付き物。てれびのスキマことTVっ子ライター・戸部田誠氏が豊富な資料をもとに分析する。
生放送が始まっても画面が真っ暗。そこにいくつかのぼんやりしたロウソクの光が見える‥‥。
バラエティ史上、最も有名な“放送事故”が「8時だヨ!全員集合」(TBS系)での停電事件だろう。会場に入れなかったファンが腹いせにやったイタズラが原因と言われている。約9分後に復旧すると、いかりや長介は「8時9分半だヨ!全員集合」とアドリブを効かせ、会場を沸かせた。
生放送のハプニングといえば「笑っていいとも!」(フジテレビ系)は極め付きの宝庫。中でも強烈なのが「テレフォンショッキング」中に不審者が乱入してきたことだろう。
「何か話したいことがあるのか?」とタモリが冷静に対応する中、不穏な動きをする男に客から悲鳴が上がった。また、男から「いいともが終わるって本当なんですか?」と突然問いかけられるハプニングも。
CM後、その男の座っていた席にはクマのぬいぐるみが置かれていた。ちなみにこれは、子供番組「ロンパールーム」の演出をパロディにしたものだろう。
そんな「いいとも」で“出禁”になったのが、存在自体が“放送禁止”の江頭2:50。レギュラーだった橋田壽賀子に無理やりキスをしたのだ。彼は「さんまのまんま」でも山川恵里佳を相手に同じことをしている。
初期の「いいとも」で忘れていけないのは、ビートたけしの乱入で、なんと当時、犬猿の仲だった田中康夫の首を絞めたのである。なお、「グランドフィナーレ」で爆笑問題・太田光が同様の行為をしたのはもちろんオマージュだ。
たけしといえば、弟子のたけし軍団による“事故”は枚挙にいとまがない。中でも「朝まで暴走たけし軍団」(テレビ朝日系)での井手らっきょは特筆モノだった。土佐犬を前に裸になった井手。全身を舐められ、最後には“犯されて”しまうのだ。獣姦をテレビで放送する。今では、いや当時も考えられないことである。
犯されてしまうといえば出川哲朗も出色。「進め!電波少年」(日本テレビ系)でエイズを撲滅するという名目でゲイバーに潜入。するとビリヤード台の上で全裸にされてしまう。その時、出川が発した言葉は「ノーストップ!」、つまり「やめないで!」。のちに「出川イングリッシュ」と呼ばれる壊滅的な英語力をこの頃から披露していた。
そもそも「放送」やその「事故」とは何かということをテレビを通して考えていったのが「EXテレビ」(日テレ系)の島田紳助や上岡龍太郎だ。視聴率調査の実態を調べるために、「今から教育テレビにチャンネルを変えてください」と呼びかけ、大問題になった。
さらに「低俗の限界」を探るという企画では、上岡と紳助が座った後方に全裸の女性を配し、ちょうど2人の頭で女性の股間を隠す。ちょっとでも頭の位置がズレると、映ってはいけないものが映ってしまう状況の中でトークを行った。
映ってはいけないものを映したといえば笑福亭鶴瓶。03年の「FNS27時間テレビ」(フジ系)で酔い潰れたあげく、男性器を露出。鶴瓶はかつて「独占!男の時間」(テレビ東京系)でも同様の事件を起こしており、これが二度目。それどころか、実は「──男の時間」の最終回に再び登場した際に、今度は肛門を露出したのだ。男性器を二度テレビに、いや、前も後ろも見せたのは鶴瓶以外にいないだろう。
最近は管理が厳しく、こうした放送事故は起こりにくいが、ごく最近ではオードリーの春日俊彰。16年の「ヒルナンデス!」(日テレ系)でスポンサーから視聴者プレゼントに提供された耐久性が売りのイスを悪ふざけのあげく、破壊。店頭には「正しい座り方をしてください」という注意書きが貼られるようになった。