三代目女将が定位置でしっかりと守る数えきれぬ酔客に愛され続けた酒場遺産
この時代に、こんな空間が残っていること自体が奇跡と思えるような店。広い日本の中にあっても数少ない、そんな「酒場遺産」のひとつが、一之江の「カネス」であることは間違いない。道路に面して並ぶガラス戸と、威風堂々たる「大衆酒場」「中華そば」の2つののれん。酒場好きであれば、このたたずまいに圧倒されないわけがない。創業は昭和7年。
90歳を超えてもなお現役で、定位置である煮込み鍋の前の椅子で、時代とともに入れ替わる酔客たちを見届けてきた大女将は、昨年惜しくも亡くなられ、多くのファンが悲しんだ。しかし、現在は三代目の美人女将が同じように、店内をくまなく見渡しながら見事に客をさばいており、その様子が頼もしくも心地よい。
名物の「煮こみ」は、馬モツと牛のフワの組み合わせで、見るからに濃厚だがくどさはなく、しみじみと身体を癒す味わい。見た目より実力重視とばかり素朴に盛り付けられた「ぶつ切り」も、一口食べればわかる上等さ。ドジョウとゴボウを卵でとじた「柳川」は、野趣あふれる旨味を熟練の腕前でふわりとまとめた、粋の極みとでもいうべき一品だ。締めに必ず頼みたい、あっさりとした「ラーメン」「ワンタン」「ワンタンメン」は、太っ腹にも全て500円。
■大衆酒場 カネス
住所:東京都江戸川区一之江6-19-6 電話:03-3651-0884 営業時間:月~土4:30~20:00 日祝14:00~20:00 定休日:水、第3木曜