「あのシーン、よかったな。彼女史上最高の作品だよ」
試写室を出て感想を漏らしたが、その後一向に一般公開されない。そうした映画は、業界関係者が語り継ぐことだけが存在した証しとなる。映画評論家の秋本鉄次氏が見た「お蔵入りの現場」とは?
06年、第19回東京国際映画祭日本映画「ある視点」部門に出品。その上映時に観た鈴木京香(49)主演の「こおろぎ」は、いつになっても公開が決まらず、あれから10年以上経過してしまいました。
だけど今なお、官能シーンは鮮烈に覚えています。鈴木京香の女優人生史上、最もいやらしいあの場面を‥‥。
彼女の役柄は、山崎努演じる「少々ボケたが性欲は旺盛な老人」を介護しつつ、財産への下心をちらつかせ、色欲をあおる介護人。
まず、ヌードはおろか、セミヌードもありません。肌の露出具合は、ノースリーブにショートボトムス着用で二の腕と太腿がさらされている、といった程度です。が、当時30代後半、その程度でも、熟れ始めた肉感ボディがいやらしく強調されます。
そして山崎が京香の足の指先から太腿、手の指から二の腕を、ゆっくりねっとり、ねぶり舐め回すのです。そのたびに苦悶の表情を浮かべ、アエぐ京香。そうした口戯が多く、並大抵のカラミよりもいやらしかったですね。
公開を期待していましたが、残っているのは映画祭で配布された文字資料だけ。もはや幻の作品です。
一方、公開はされたもののトラブルがつきまとい、お蔵入り寸前の様相を呈したのが、高岡早紀(45)主演の「モンスター」(13年、アークエンタテインメント)。事前情報として、「一般用の他、濡れ場を長く編集したものなど、数バージョンある」と聞いていました。さらにAVメーカーが絡み、「濡れ場部分のみを抜き出したDVDを発売する」といった噂もささやかれ、そこで金銭トラブルも噴出するなど騒々しい中、実際に公開されたのは──。
高岡が思いを寄せる加藤雅也演じる男との濡れ場は、熟女ならではの情熱的なもの。さらに真正面から脱ぎ、ソフトフォーカスがかかっているものの豊乳の先端がうっすら見えるのは、評価に値するところ。僕が観たのは、いったいどのバージョンだったのでしょうかね。
ただ、トラブルが尾を引いているのか、DVD化は未定です。
同作でもそうだと思いますが、現場では“いちおう”撮るが、実際には使用しない官能シーンはあるもの。CM契約の関係や、事務所からのNGなど、さまざまな理由で完成品から濡れ場が減ることはあります。
そうした背景を想起させるのが、「光」(17年、ファントム・フィルム)の橋本マナミ(33)の濡れ場です。昼間から瑛太と絡むシーンが、非常にエロティックですばらしい。全裸で立ち上がり、画面いっぱいに日本人特有のぽってりとした豊尻を見せつけるほか、瑛太のアレを、口で愛撫するのです。
「じゅぽ‥‥じゅる‥‥」
そう音を立て、ねちっこく“瑛太自身”を舐め続ける。ここまでやってのけたのです。現場では、これ以上のハードバージョンを撮っていたとしてもおかしくありません。
さて、皆さん、忘れていることはないですか? 14年夏、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットに登場し、過激な下乳露出ドレスをまとい、出演した香港映画「太平輪」のプロモーションをした長澤まさみ(30)のことを。
同時期に週刊誌業界では「ついに長澤がヌードで大胆濡れ場を解禁!」と話題になりましたが、本国公開後、そんな声は一つも聞こえてきません。僕も実際はどうなのかと楽しみにしていましたが、日本公開すら未定のまま。
結局撮れなかったのか、撮ったが事務所サイドからNGが出たのか‥‥。こうして忘れ去られゆく濡れ場は、多々、あるのです。