フラワー・メグ(67)。彼女が渾身の艶技で挑んだ映画「脱出」(和田嘉訓監督、72年、東宝)は、まさかのお蔵入りに。45年目にしてついに明かされるその“真相”とは?
「正直、私もつい最近までお蔵入りの理由についてあまり深く考えたことなかったの。というより、作品を見ること自体、一昨年が初めてだった。きっかけは、荒木一郎さんの歌手生活50周年のトークイベントにゲストに呼ばれて出演したこと。その時、『脱出』が上映されたのです」
イベントは16年10月、渋谷で行われ、往年のヒット歌手・荒木一郎の50周年を祝うファンと、「幻の映画を見よう」というコアな映画ファンが合わさり、大盛況だったという。
「荒木さんも最初『こんな映画あったっけ?』と言っていましたが、東宝でもお蔵入りとして、半ば封印されていたみたいです。ただ、今回のイベントで担当した東宝の人が若い人で、あまり深く考えないで倉庫から出してきてしまったとか(笑)。でも、そのおかげで私も45年ぶりに見ることができたんですけどね」
お蔵入りはどんな理由か。つい勘ぐってしまうが、ストーリーはこうだ。
〈黒人とのハーフである青年がバーで白人客に絡まれて暴力を振るってしまい、相手に生死不明のケガを負わせてしまう。その黒人を幼なじみの女性やヒッピー崩れ、自称・歌手、新左翼学生などが協力してブラジルに逃がそうとし、そこに事件記者が絡むが‥‥〉
ハーフ青年を「ルパン三世のテーマ」のボーカルとして知られるピートマック・ジュニア(藤原喜久男)、ヒッピーを石橋蓮司、歌手を林ゆたか、学生を原田大二郎、事件記者を荒木一郎、そして紅一点をフラワー・メグが演じている。
ストーリーだけを聞いていると、なぜお蔵入りに、と思うが、そこには当時の世相が影響していたのである。
「公開の予定が72年3月、でもその年の2月にあの『あさま山荘事件』が起きてしまった。映画の中で左翼学生が、騒動を革命に利用しようとする──みたいな展開があって、東宝としてはまずいんじゃないか、となったみたいですね。それと、黒人を差別するようなセリフがあったのも問題になったと聞きました」
確かに作中、メグが火炎瓶を持って機動隊に立ち向かうなど、反体制的要素を加えた演出はあった。また、同年に公開された「鉄輪」(新藤兼人監督、ATG)も性描写の強烈さで当初配給先が決まらないなど、映画界は価値観に揺れていた時期ではあったのだ。
もっとも、そのおかげでメグが演じた渾身のベッドシーンも封印の憂き目にあったのだが、
「幼なじみのピートマック・ジュニアが脱出する前日、という設定だったかな。その頃は、アクション映画にも濡れ場が必要だったんですよ(笑)。流れとしては、シャワールームで幼なじみの2人がじゃれ合うように絡み、そしてベッドに移ってメイクラブ‥‥という感じですかね」
撮影当時のグラビア誌では、シャワールームで泡だらけになってじゃれ合うパンティ1枚の彼女とピート。また、ベッドルームでは彼を深く受け入れながら、恍惚の表情を見せるメグも見られる。小柄だが均斉の取れたボディは、70年代初期のヌード女王らしい悩ましさである。
「セクシー? カメラマンさんが上手なんじゃないですか(笑)。私、脱ぐことに緊張はしないんですよ。ただ、監督を信頼しているだけで‥‥。そんなところが開けっ広げと思われたのかもしれませんけどね」
世相に封印された幻の映画とメグのみずみずしい肢体。幅広い形での公開とソフト化を望むファンも多いのではないだろうか。