数年に一度と言われるほどの強烈な寒気の影響で、今冬は冷え込みが強まっています。1月22日の大雪は、東京の平年降雪量10センチの倍以上となる23センチ(昨年は0センチ、2年前は6センチ)となりました。まれに見る大雪となりましたが、1月の平均気温(東京)も13~17年が5~6℃だったのに対し、今年は4.7℃と低く、平成以降、一番の寒さです。立春を過ぎても相変わらず寒さが続き、2月も全国的に平年より低温となる確率が80%だそうです。
さて、寒い冬でも寝汗をかく人がいますが、冬の寝汗は健康面で危険か否か、どちらでしょう。
人間は睡眠が深くなると体温を下げるべく汗をかくようにできており、私たちは夏ほどベトベトにはなりませんが、冬でも必ず汗をかいて脱水しています。体重も500グラムほど減っています。寝汗が多い場合、部屋の暖房設定を間違えていたり、必要以上に厚着をしている可能性があります。
特に電気毛布やこたつでのうたた寝は、寝汗を多くかきます。自分の熱ではなく機械の熱で温まるので、電気毛布を使うぐらいなら普通の毛布を増やすほうが健全です。また、毛布を使う場合は、かけると体に熱がこもりすぎて汗をかきすぎることがあるので、かけるよりも敷いたほうが効果的でしょう。寝ている時に「自分が発する熱」を逃がさなければ寒くなりません。
加えて、電気毛布よりは湯たんぽのほうが寝汗をかかずに温まれます。最近はおしゃれな湯たんぽも多く出ていますが、冷え性の人は足を温めるのが肝心で、安眠感も得られます。同じく使い捨てカイロを足や背中に貼るのも効果があります。
吸水性や吸湿性のよくない寝具も、寝汗を吸収しないので、起きた時に寝汗が残ります。体温をスムーズに調節するには、布団の中の湿度を50%前後に保つ必要があります。天然繊維の寝具は吸湿性に優れ、汗を吸い取ってくれない化学繊維の寝具は長く使うと蒸れます。天然繊維の寝具に変えたほうが、寝汗をかいてから布団を出た際の冷えも防げるでしょう。同じくパジャマも吸水性に優れたパイル生地や多重ガーゼ生地などが適しています。
そのほか、冬の寝汗の原因としてストレスもあげられます。それでなくとも気分が塞ぎがちになりやすい季節に、仕事などのストレスを抱えると寝汗が多くなります。これは“冬季うつ”と言われる症状です。
寝る前のアルコールも寝汗の原因となります。飲酒後2~3時間すると、体内でアルコールを分解したアセトアルデヒドという物質を汗や尿として体外へ出そうとするからです。
冬の寝汗は以上の原因がほとんどで、健康面での危険性は高くないと言えます。
もっとも、ふだんはさほど寝汗をかかない人が突然大量の寝汗をかいたら風邪の可能性があります。口が異常に乾いたり、尿の量が多かったり、急激な体重の減少などが伴うと糖尿病の可能性があります。疲労やめまい、頭痛、肩凝り、吐き気などを感じると自律神経失調症かもしれず、精神科や心療内科の受診が必要となります。
寝間着や寝具まで取り換えねばならないほどおびただしい量の寝汗が出たうえ、倦怠感に見舞われ食欲もない場合は、結核の可能性もありますが、現代の結核は昔のように不治の病ではありません。2週間たっても汗や咳が止まらない場合は早めに医師に診てもらってください。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。