それにしてもこれまで数々の修羅場をくぐってきたというX氏だが、組関係の人物が仮想通貨に資金の流れをシフトしてきている以上、身の危険を感じることはないのだろうか。
「それはありません。現在の組関係は昔のように『1年で倍にしろ』などと乱暴なことは言いません。仕手の時代は組関係とブローカーが一蓮托生のキナ臭い関係で行方不明になった人も数知れない。今は多少資産が目減りしても、最終的に安定的にトントン以上に稼げるのが至上命題。しかも経済にも強いですから、外貨やファンドや不動産などさまざまな投資案件や情報も持ち込まれます。むしろ、情報が武器のヤクザ稼業のほうが確度の高い情報を握っていますよ」
かつては投資資金を巡って「追証」(信用取引で入金している保証金以上の損が出た場合に追加で入金すべき金額のこと)を迫られるケースなどもあったというが、仮想通貨での暴落を回避する方法はあるのだろうか。X氏は言う。
「私自身は相場でもチャートなどはあまり参考にしないタイプですが、基本的には早めに利食いするようにしています。これは株式でも同様ですが、お金の流れは、リスク資産と安定資産の間を常に行き来しているのです。その流れに沿って資金を移動させているだけ。特に多額の資金量を誇り投資熱の高い国民性の中国人の動向に注目しています。最近、仮想通貨から撤退したのも無関係ではありません。彼らが上海株の暴落があった15年6月以降に初めて安定運用にも目を向けるようになった。これは博打好きの国民性を考えると画期的なことで、仮想通貨のバブルはヤバイなと思うようになりました。基本的に歴史の浅い市場なので、あまりチャートは参考にならないのではないでしょうか」
そしてX氏は、ヤクザと仮想通貨についても不敵な将来を予告するのだ。
「ヤクザの1兆円とも言われる巨大な資金が、タンス預金で流動性がない状況というのは考えにくい。むしろ伝統的なシノギが厳しくなる中で、仮想通貨は格好の新しい資金源になると思います。この流れが進めば、日本のヤクザのみならず、他の国の組織との連携が進むかもしれません」
仮想通貨の普及は、諸刃の剣と言えるのかもしれない。