仮想通貨に注目するのは、とかく相場操作できる投機先としてだけでない。いわゆる資金洗浄先(マネーロンダリング)としても注目しているという。社会部記者が明かす。
「昨年、警察庁が初めて仮想通貨による『疑わしい取引』の実態を明らかにしました。それによると、17年4月から10月までに資金洗浄の疑いなどがある取り引きが170件もあったんです。その大半が組絡みの資金洗浄だったと見られています。手口は、他人名義の口座から、偽造された名義の電子財布(ウオレット)への送金。こうしたケースは昨年4月の改正資金決済法が施行されるまで野放し状態で、今ではさらに、ヤクザマネーはアングラ化しているのが実態です」
実際、X氏の耳にも資金洗浄をにおわせるような問い合わせがあったほどだ。「ブローカーを通じて『ビットコインは足がつかないのか?』とか『仮想通貨を使用すれば匿名性は保てるのか?』と聞かれたことはありますね。確かに仮想通貨はビットコインのように、取り引き記録が全て公開されているケースもありますが、趨勢としては、むしろ取り引きの匿名性が強まるコインの人気が高まっています。当然ながら資金洗浄にはもってこいの温床になっているのは間違いないでしょう」
実際、昨年、ロシアのマフィアが、40億ドル(約4400億円)相当のビットコインをマネーロンダリングしてギリシャで逮捕されたほか、テロ組織などの送金にも利用されるなど、世界的にも中央政府にチェックされない仮想通貨は、有力な「資金洗浄装置」として闇世界で活用されている実態が報告されている。
「もはや日本でも違法薬物などの非合法な取り引きの大半が、仮想通貨で決済されるのは時間の問題です。しかもビットコインなどの透明性の高い仮想通貨ではなく、よりアングラな草コインが、閉鎖的なグループの中で決済されていく可能性が高い。コインによっては投資目的ではなく、閉じられたネットワークの中でだけ通用すれば、資金洗浄専用のコインが出てきても不思議ではない」(X氏)
ヤクザと仮想通貨は反中央政府という点で共通項を持つだけに、そのつながりをより強めつつあるのだ。