X氏が続ける。
「仮想通貨というのは、わかりにくいかもしれませんが、こと投資について言わせてもらえば、一般的な外貨投資となんら変わりません。需給で価格が変動するので、参加者が増えれば増えるほどコインの価値は上がっていくわけです。実は今回、日本で資金流出が話題になったコインチェック社のNEM(ネム)のような仮想通貨は、全世界に1500種類以上あると言われています。その仮想通貨の安全性や信頼性はといえば玉石混交。国家が信頼性を担保する一般の通貨と違って、その信頼性はITのテクノロジーとコイン開設(業)者の人間性によらざるをえない(笑)。中には価値がついていないような“草コイン”もあるわけです。そこに目をつけて大量にコインを買い付ければ、瞬く間に価値は高騰します。それをすぐに利食い(利益を確定すること)すれば、かなりの儲けが出る。私自身も2倍とは言いませんが、5割増し近い儲けを出したこともあります」
仕手株よろしく、どこの馬の骨ともわからない草コインでも、価値が急騰したとなると、関心が集まるのが、生き馬の目を抜く投資の世界。すると不思議なもので、無価値だったコインにもさらなる資金が流入してくるのだ。
「仮想通貨のプレーヤーで最も元気があるのは中国人の投資家。私自身が仮想通貨を手がけるようになったのは14年からですが、実はその前年の13年12月に中国政府が、中国の銀行に仮想通貨の送金を禁止する措置を取ったのがキッカケ。日本ではほとんど話題になっていませんでしたが、中でも香港ではかなり仮想通貨への投資が過熱していたことがわかった。草コインもよりどりみどりだった。そこで、資金を集めて14年になって投資したところ、かなりの儲けになったんです。それ以来、仮想通貨の相場は17年のビットコインの暴落まで比較的堅調だったのではないでしょうか。ただ私自身、仮想通貨から別の投資先に乗り換えていたので難を逃れました」(X氏)
だが、ビットコイン暴落の影響はヤクザ社会を直撃していた。ヤクザ事情に詳しいフリーライターによれば、
「仮想通貨を株やギャンブルに代わる新しい小遣い稼ぎの手段として利用している組員が多い。投資額はせいぜい数十万円程度だが、ビットコインだけでも3分の1以下にまで暴落しているだけに、いまだ売るに売れずに塩漬けにしている組員も多いと聞いています。実は、幹部クラスのみならず、末端の組員の間でも仮想通貨は数少ない小遣い稼ぎの手段として注目されていた。つまり、ヤクザマネーが末端までかなり流入しているのは間違いない」