山梨県は言わずと知れたぶどうの産地。生産量、消費量とも、2位に大差をつけての全国1位で、ワインの消費量も全国1位である。
「ぶどうには、強い抗酸化力を持つアントシアニンやレスベラトロールなどのポリフェノールをはじめ、ミネラル類、有機酸などさまざまな有効成分が豊富に含まれている。中でもポリフェノールの一種のレスベラトロールが細胞の老化の原因になる活性酸素を取り除いてくれ、長寿遺伝子を活性化させて寿命を延ばすんです。しかも食品に含まれているビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどは通常、人体に30~40%しか吸収されないのですが、ワインに含まれているこれらの成分は100%吸収される。毎日適度のワインは健康寿命を延ばすんです」(永山氏)
さらに甲州の健康寿命ナンバーワンを支えているのは、「海なし県」にあって、なんと魚介類だった。山梨県の1世帯当たりのアサリの消費量は日本一。全国平均の倍なのだ。貝類全体の購入量でも全国4位(4603グラム)につけている(総務省統計局の家計調査)。
山梨県で貝といえば「煮貝」。駿河湾で獲れたアワビを加工し、醬油漬けにして木の樽に入れ、馬の背に乗せて甲斐に運んだところ、馬の体温と振動によって醬油がアワビに程よく染み込み、甲府に着く頃にはちょうどいい味に仕上がったのが由来だそうだ。材料を、アワビと同じミミガイ科で廉価なトコブシに換えたものでも栄養価は高い。
「これらの貝類にはビタミンB群やタンパク質、亜鉛やカルシウムといったミネラルがバランスよく含まれていますが、何といっても豊富に含まれているタウリンです。含硫アミノ酸の一種で胆汁酸やインスリンの分泌促進作用、血圧を正常に保つ作用、血中の悪玉コレステロールを下げて善玉コレステロールを増やす作用、心筋の働きを正常に保つ作用などがあります。低カロリー、高タンパクな食材です」(永山氏)
そして山梨県は干しアジの消費金額で静岡県に次いで2位と、干物の消費量も多い。海がない分、干物に頼るのはわかるが、これもまた長寿食だった。
「干物、特にアジは干物にすると、アミノ酸などのうまみ成分が生成される。さらに、ビタミンやミネラルなどの栄養素が濃縮され、タンパク質や脂肪が鮮魚の時より、2倍以上に増える。また、干物にする際に天然塩を使って干すので、アジの水分が中に閉じ込められ、生の魚を焼いた時よりもおいしくなるうえ、保存が利く。健康長寿には理由があるのです」
(永山氏)