都道府県別の健康寿命で男女ともトップクラスなのが山梨県だ。その秘密が何と「読書」にあったという。
日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超え、世界的にも“長寿大国”となった。しかし、厚生労働省の統計(2016年)によると、日本人は平均寿命と健康寿命の差が大きく、男性は約9年、女性は約12年も不健康な期間があるとされているのだ。
つまり支援や介護を必要とする期間が、平均で9~12年もあるということなのだ。そんな中、厚生労働省が今年3月に発表した都道府県別の健康寿命ランキングによれば山梨県は男性が1位。そして女性は3位。
さかのぼって2015年、12年の発表では山梨県はともにトップだったのだ。具体的に見ても、山梨県では要介護認定の人が圧倒的に少ない。それを先頃テレビ局がAI(人口知能)に分析させ、その結果を発表した。データは、全国の高齢者延べ41万人に600項目以上の質問し、その質問項目を10年以上の追跡調査したものだという。山梨県に工場を持つ製薬会社の大井厚氏がこう言う。
「山梨県は全国有数の塩分多量摂取県。さらに喫煙率も高く、運動量の少なさもワースト県なのです」
その県が健康寿命がトップの理由を、AIは読書量だとはじき出した。かつて行われた文科省の社会教育調査でも、担当者による「人口10万人に対する図書館の数は全国平均が2.61館なのに対し、山梨は6.59館とダントツの全国1位です」というコメントが残されている。もっとも、「健康と読書」の取り合わせはちょっとピンとこないのだが、スポーツインストラクターの大川香氏が言う。
「読みたい本を探して歩き回るのでいい運動になる。また、本を読むということは、それだけの活力があって、知的好奇心があるということです」
また、アメリカのエール大学の調査、研究でも読書は寿命を長くすることが分かったという。〈週に3.5時間まで読書をするグループは、向こう12年で17%ほど死亡リスクが低かった。さらに3.5時間以上読むグループは23%も数値が高かった〉とのことで、1日に30分しか読書をしない人でも、まったく読書をしない人より長生きすると指摘している。そして、さらに米・ラッシュ大学メディカルセンターの研究でも〈読書などの精神を刺激する活動を続けていけば、認知低下が32%遅くなる。高齢になってからの読書は精神的退化を32%遅らせ、逆に頭を全然使っていないと精神的退化が48%加速する〉と言っている。
もちろん、食生活や運動の習慣なども健康寿命を延ばすには大事なポイントなのだが、読書ならすぐにでも始められる。読書の秋の今こそ実践してみてはいかがだろうか。
(谷川渓)