5月22日で「小泉再訪朝」からちょうど14年──。日本人拉致被害者は1人も帰国していないどころか、北朝鮮側からは「すでに解決済み」とあしらわれる始末。おまけに金正恩党委員長の暴露発言で、まさかの「没交渉」まで明るみに。米朝首脳会談を直前に控え、アメリカに丸投げの“見殺し外交”の内幕を暴く。
「何よりも、拉致問題の解決です。すべての拉致被害者のご家族がご自身の手で肉親を抱きしめる日が訪れるまで、私の使命は終わりません」
12年暮れの衆議院選挙で民主党から政権を奪い返し、翌年1月の所信表明演説で拉致問題について力強くこう宣言した安倍晋三総理(63)。それから約5年半、拉致被害者の家族に期待を抱かせただけで、拉致問題は何一つ進展していなかった。
安倍政権の最重要課題として取り組み、14年5月に拉致被害者の再調査などを決めた「ストックホルム合意」を北朝鮮と交わしたまではよかったが、それからというもの思惑どおりにコトは運ばなかった。3月に発行した「金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて」(文藝春秋)の著者で、東京新聞論説委員の五味洋治氏は安倍総理の“誤算”をこう語る。
「北朝鮮のまとめた再調査報告書には、拉致被害者が亡くなっていたという内容が含まれ、日本側は受け取りを拒否しました。強気な態度を見せても、経済面で困っている北朝鮮は何らかの形で日本に接触してくると高をくくっていたら、今度は核やミサイル問題が大きくなり、日本は独自制裁を強化。すると、北朝鮮は拉致問題の調査を全面中止してしまったのです」
それから安倍総理はことあるごとに圧力路線を主張して、しきりに「頑張っています」アピールをしていた。が、その間に周辺諸国は対話路線に舵をきり、日本だけが蚊帳の外に。
緊迫していた北朝鮮情勢は、2月の平昌冬季五輪の南北融和ムードを機に、4月27日には南北首脳会談が行われ、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(34)と韓国の文在寅大統領(65)が握手を交わした。険悪な雰囲気だった中国も、今年になって正恩氏を2回も招いて急速に距離を縮めている。そして、6月12日には史上初の米朝首脳会談がシンガポールで開かれようとしている。取り残された安倍総理は汚名返上とばかりに動き出すが、
「4月中旬に訪米した安倍総理はドナルド・トランプ大統領(71)と会談して、拉致問題を提起するように頼みました。米朝首脳会談の直前にはカナダで主要国首脳会議が予定され、そこでも安倍総理はトランプ大統領に念押ししてお願いするようです」(官邸担当記者)
拉致問題がまったく進んでいないことに焦りを感じているようで、こんな情報もささやかれている。官邸担当記者が続ける。
「米朝首脳会談で話し合われた内容が気になるので、安倍総理はシンガポールの会場近くで待機して、すぐに聞き出す段取りなのではないかと言われています。最近はメディアで使われる『蚊帳の外』という言葉にも過敏に反応して、だいぶ焦りの色がうかがえます」
そんな安倍総理をあざ笑うかのように、正恩氏の「爆弾発言」が注目を集めている。