5月10日にフジテレビのニュース番組が、南北首脳会談で正恩氏が発した衝撃発言を紹介。日本人拉致問題について触れ、
「韓国やアメリカなど、周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は直接言ってこないのか」
と発言したというのだ。正恩氏の暴露が事実なら、「安倍総理はこれまで何もしていなかった」と国民に受け止められてもおかしくないだろう。翌日に「プライムニュースイブニング」(フジ系)に生出演した安倍総理は、この発言について聞かれると、
「我々は北京ルートなどを通じてあらゆる努力をしています」
と「不都合な真実」に動揺したのか、たじたじになりながら答えるのがやっとだった。しかも報道内容を否定しなかったことで、この「正恩発言」どおり、北朝鮮への直接交渉を怠っていた可能性も高まっている。そんな中、安倍総理が答えた「北京ルート」について、五味氏は疑問を呈する。
「小泉純一郎氏(76)が総理時代に訪朝した時は、北朝鮮の情報機関と外務省関係者が直接携帯でやり取りして、水面下で交渉を進めていました。それが今では北朝鮮とのパイプは切れて、連絡がつかない状態のようです。私が北京に勤務していた時は、(在中国)日本大使館と北朝鮮大使館の外交員が、非公式に意見交換をして交流を重ねていました。それが安倍政権になってから、勝手な動きをするなとにらまれてしまったそうです。北朝鮮がミサイルを発射するたびに、『政府は北京の外交ルートを通じて抗議した』と報じられますが、実際は北朝鮮大使館にファックスを送っておしまいなんです」
いまだに対話の糸口を探しているお粗末な状況で、アメリカに拉致問題を丸投げするとは‥‥。笑えない話だが、安倍総理にとって内心穏やかではない出来事は他にも起きていた。
北朝鮮に敵対行為などの理由で拘束され、長期間にわたって領事面会も拒否されていた3人のアメリカ人が、5月9日に解放されたのだ。拉致問題を取材するジャーナリストはこう話す。
「アメリカのポンペオ国務長官が今年の3月末に極秘訪朝すると、その後、5月にもう一度訪朝したタイミングで解放されました。この成果に米国内で“トランプ株”は上がったのですが、日本では拉致被害者家族を支援する関係者の間で、『アメリカは2回平壌に行っただけで交渉をまとめられたのに、なぜ日本政府は長きにわたって何もできないのか』と、安倍総理に不満の声が上がっています」
日米で歴然とした交渉能力の差を見せつけられ、これでは安倍総理が拉致問題を解決する気がないと思われても当然だった。